お客様事例インタビュー

社会に豊かさをもたらす「意味的UX」とは? TISがデザインに注力する理由

公開日 2023年10月26日 最終更新日 2023年10月26日

社会に豊かさをもたらす「意味的UX」とは? TISがデザインに注力する理由

国内大手のシステムインテグレーターであるTIS株式会社。インフラからサービスまで幅広くカバーするIT技術に加え、デザイン面からアプローチして自然と「使い続けたくなる」体験設計にも力を入れているそうです。

DXビジネスユニットDX企画ユニットDXクリエイティブデザイン部長の鈴木翔一朗さん、チーフの川添仁子さん、同じくチーフの熊谷優介さんにお話を伺いました。

ITとデザイン、両輪で社会基盤を支える

― まず、TISのDXクリエイティブデザイン部はどのような事業を行っているのでしょうか?

鈴木: 私たちはUXデザインを担う部署です。前身となるデザインチームはR&D部門内にありましたが2021年にDXを推進していく専門のデザイン部として立ち上がりました。

― デザインに注力する部署ができた背景はありますか?

鈴木: TISは事業を通じて主に「金融包摂」、「健康問題」、「低・脱炭素」、「都市への集中・地方の衰退」の4つの社会課題解決を目指しています。それはつまり、多くの生活者に多大な影響力を持っているともいえます。お客様が社会で叶えたい「ありたい姿」に対して、もし我々が技術力があるからといってソリューションばかり先立たせてしまえば、本来技術的には可能であることが社会実装としては実現しなかったり、ビジネスとして軌道に乗らなかったときに適切なサポートができないかもしれません。

それを可能にするのはデザインの力であり、生活者の視点に立ってUXリサーチやフィールドワークを行って体験設計をしたり、WhyとHowが適切につながっているかをお客様と探索することができる、専門性を持った組織が必要でした。

― 川添さんと熊谷さんの役割について教えてください。

川添:私はUXデザインを担当し、使い続けたくなる体験の創造をしています。

川添仁子さん

熊谷: 私はデザインリサーチを主に担当し、そもそも使いたくなる価値とは何かの発見をしています。

熊谷優介さん

― 熊谷さんは「リサーチカンファレンス」(2023年は5月に開催済)のスタッフとして社外でも活躍されていますよね。お二人ともキャリアのスタートからUXデザインに関わられていたんでしょうか。

川添: 私はシステムエンジニアからキャリアチェンジしました。もともとはプログラムを書いていたんです。

熊谷: 私もエンジニアから転じる形で希望してこのDXクリエイティブデザイン部に参画しました。

― お二人とも元エンジニア!スキルや希望次第で社内で柔軟に転身が可能なのですね。エンジニアリングもデザインも理解しているということは、お客様にとっても頼もしいですね。Miroはどのようなきっかけで導入してくださったんですか?

熊谷: 私が「リサーチカンファレンス」でMiroを使い込んでおり、社内業務でも使えないかと模索したのがきっかけです。リサーチにせよプロジェクトにせよ、プレゼン資料を投影しながらファシリテーターが意見を吸い上げるような形だと、どうしても参加者は受け身になってしまいます。全員で作りあげられるような形にしたいと思い、Miroを使い始めました。

熊谷さんが個人として執筆したnote【RESEARCH Conference 2022】miro体験設計の裏側
前代未聞の規模でMiroを利用するプロジェクトを成功させた体験設計の様子が描かれている

川添: 以前の現場で使われていたり、オンラインホワイトボードといえばMiroは老舗ですので認知はしていました。私達の業務にとっては、お客様と議論した内容が見やすい形で残せる、一体感を持って調査結果を分析できるなど、効率や体験の面で必要なツールでした。他にFigjamやStrapといったプロダクトと比較しましたが、最終的には私達の他組織や社外案件との協業という利用シーンを鑑みて、ユーザーライセンス体系が柔軟でコストや管理面でメリットがあるMiroが一番良いという結論を出しました。

― ありがとうございます。日常業務ではどのように活用してくださっていますか?

川添: 基本的には1案件1ボードで進めていますが、社内だけでアイディアを検討したり、提案を深掘りするためのボードを用意することもあります。

熊谷: 例えばリサーチのコンセプトを作る際、Miroに調査すべき内容のフレームを配置して、アイデアのメリットや問題点などを構造的に書き込み、お客様と対話しながらワークを進めています。

構造的に整理しながらコンセプト開発を行う

川添: 結論だけでなく過程がMiroに残っていますし、話していることを目で確認しながら進めることができるので、議論が空中戦になることが減りました。成果物の状況もリアルタイムに見て分かるので「あのとき投影していた資料ってどこだっけ?」といった探しものをしなくて済むので、効率もアップしました。

熊谷:私はUXリサーチを通して、お客様とは受発注の関係を越えて一緒に価値のあるものを世に届けたいと思っています。Miroではお客様と一緒に分析や発散ができるので、我々から一方的に結果を提示するよりも、質を高められているのではないかと思います。

お客様と視覚化しながら分析や発散を行っている

― Miro以前と以後ではどのようなところが変わりましたか?

川添: 話しながら関係性を整理していくので、物事の構造化に慣れてスキルアップになっていると思います。また、お客様と対面だけで進行すると、どうしても会わない時間での非同期作業は進めにくいところがありましたが、今はうまくMiroでデジタルのメリットを活用するようにしています。

たとえば、案件のキックオフは対面で「はじめまして」の場を作りますが、ワークは模造紙やリアルのホワイトボードを使うのではなく最初からMiroで行います。

お互いに顔を合わせた安心感をもって、以後はオンラインでお互いが都合の良い時間にMiroで非同期で効率よく作業を進めることができます。個人の仕事の進め方でも、自分の頭の中を整理したり、Miroを便利なメモとして使うようになりました。

社会をあってほしい方向へ。「意味的UX」

― Miroの価値はどんなところにあると思いますか?

川添: 私達がデザインをするときに「使いたくなる」+「使い続けたくなる」デザインの概念を「意味的UX」と呼んでいます。生活者が、生活に新たな豊かさを取り込むとき、その動機や意味があり、やってみたら楽しくて続けたくなった、そうして社会を「あってほしい」方向に変えることができるはずです。

そこでMiroの「意味的UX」を考えるとすると「孤独にならない」ことではないかと思います。もしExcelで課題管理をしていて、ディスカッションしながらExcelに記録していると孤独を感じてしまったり、誰かがまとめると、どうしてもその人の仕事になってしまうところがあるんです。でもMiroにはそれがありません。

熊谷: 誰かがオンラインでMiroボードに来れば名前のカーソルが動いているのが見えたり、気持ちをスタンプで表現できたり、手書きもできたり、直接会わなくてもチームで一緒にいるような体験ですね。

使いたくなる+使い続けたくなる=意味的UX
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デザインプロジェクトは地域からカタールの国家プロジェクトまで

― TISのデザイン事業がやられている具体的なプロジェクトについても教えてください。

鈴木: 例えば「会津財布」という会津若松市民や観光客が利用できる地域ウォレットアプリのブランドコンセプトづくりがあります。このアプリには電子レシートやクーポンなどの便利な機能で会津若松市を活性化する目的があるのですが、会津らしさを理解でき、使いたくなるようなリデザインを行いました。

会津財布

また、カタールの「省エネ促進サービス」のデザインも手掛けました。カタール国民各世帯の電力消費量データを分析し、アプリなどで可視化することによりカタール国民の消費電力削減を促すことを目的としたサービスです。

実はカタールの光熱費は日本と違って非常に安価なため、国民の省エネのインセンティブを設計するのがとても難しいんです。そこで、中東の方にとって「恵み」の象徴である「雨」で「木を育てる」ゲーミフィケーションを取り入れたり、コラムにリアクションしたりSNSシェアすることで国民の一体感を醸成するなど、行動経済学を取り入れたコンセプト開発を行いました。

カタール国民向け省エネ促進PoC

― どちらも社会的意義が大きいプロジェクトですね。部内ではチームビルディングでもMiroを使っていただいているそうですが、どんな風に使われていますか?

熊谷: 例えば以下は、チームメンバーが自発的に作ったお互いを知るための質問票のMiroボードです。他にも、4象限マップなどで得意なことやスキルアップしたいことを表現するようなボードなどもあります。

チームワークを深めるためのMiroボードの一例

川添: 同じチームであっても、誰とでも同じ雑談をするわけではないですし、仕事の興味関心の方向性やスキルアップしたい領域など、なかなか会話しにくいことをMiroでシェアしています。

― 組織づくりとして気をつけていることはありますか?

鈴木: 私達には、エンドユーザーである生活者が社会でよりよく過ごせるための価値や体験をお客様と一緒に実現していく責任があります。そのためにも、私達自身が「朝起きて憂鬱にならない」のは大事なことだと思っています。

例えばこの半期で楽しかった案件や楽しくなかった案件はどんなことだったかは、その人の価値観や状態に大きく関わることです。一方で、お互いに違うプロジェクトに忙しいと遠目には分からなかったり、なかなか前向きにシェアしないようなことでもあります。そういったことをMiroでシェアするなどお互いを知る機会が持てれば、感じ方や思いを理解し合い、強みを発見したり、相手のために出来ることも変わり、自分たち自身で仕事の時間を豊かにできるはずです。

幸い、現在の働きがい調査では私達のチームの満足度は非常に高い結果が出ています。このチームはさらに大きくなり、メンバーが増えて多様性が増していくかもしれません。それでもなるべく半年に1回程度はオフサイトの機会を設けるなど、このチームで過ごす時間が誰にとっても豊かなものであるようにしていきたいと考えています。

意味的UXで、社会を豊かにしたい。

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Shiono Yuka

Miroのマーケティング部門に所属。事業会社でデジタルマーケティングやプロダクトマネジメントなどを経験してきました。フルリモートで多国籍の開発チームを率いた等身大の苦しみを活かして、Miroのオンラインコラボレーションの魅力を発信していきます。