新規事業の立ち上げにはMiroが欠かせない、伊藤忠テクノソリューションズのMiroの使い方
公開日 2023年3月10日 最終更新日 2024年1月24日
企業の新規事業創出と立ち上げを支援する、伊藤忠テクノソリューションズのBuildサービスチーム。
既存のアセットや強みを活かして社会課題を解決していく事業企画の場面で、Miroは欠かせないツールといいます。実際にクライアントへのファシリテーションの場でMiroを活用する伊藤忠テクノソリューションズのDXビジネス推進事業部、Buildサービスチームの門屋町(かどやまち)咲穂さんと、板倉翔太さんに話を聞きました。
新規事業の課題抽出と実装を支援するBuildサービスチーム
― まず、お二人の事業部と役割について教えてください。
門屋町: 私たちが所属するDXビジネス推進事業部 Buildサービスチームは、新規事業を立ち上げたい企業様へのご支援を行っています。事業の企画から開発までを一気通貫でご支援していて、特にクラウド、UXデザイン、アジャイルには強みを持っています。主なお客さまは製造業や鉄道、金融などの企業様で、私はそのサービスデザインを担当しています。
板倉: 私はソフトウェアエンジニアで、フルスタックの経験もあるためシステム設計も行いますが、お客さまとはユーザー体験を設計するUXエンジニアの立場で関わらせていただくことが多いです。アイディア出しから、お客さまの課題抽出、どの領域にフォーカスするかなどを対話しながら進めていきます。
― 実際に出来上がるものやアウトプットはどのようなものですか?
門屋町: 最終アウトプットは、Webサービスが多いでしょうか。チケットレスサービスのようなモバイルアプリもあります。
板倉: 私はエンジニアなので、少し技術寄りのアウトプットが多いです。課題を深掘りして、実際に動くプロトタイプを作り、動きを見ながら変更を加えたり。プロトタイプになる前のカスタマージャーニーマップやペルソナや技術資料などをお渡しするケースもあります。
よし、日本流にローンチしよう
― どのようにMiroを見つけて、使い始めたのかきっかけを教えていただけますでしょうか。
門屋町: そもそもチームが発足したのは2020年春です。このBuildサービスチームには着想の元となったアメリカの企業があります。コンサルティングからプロダクトのアーキテクチャ設計やデザインまで一気通貫で行う企業で、チームリーダーが2019年にアメリカのシアトルに視察に行き、「自社でもやろう」と立ち上げました。その企業が使っていたのが、Miro採用のきっかけですね。
アメリカのテック企業は、社内にエンジニアを抱えて、内製でプロダクト開発も改善も非常に早いスピード感で進めています。日本企業もSIerに丸投げする開発スタイルではなく、内製化して自分たちでサービス改善をする機運が高まると見越して、「日本流にローンチしよう」とBuildサービスチームは立ち上がりました。
折しも当時はコロナ禍の入り口でした。緊急事態宣言の発令で物理的に出社できなくなり、Miroがあって良かったですね。非常に重宝しており、その後も使い続けています。
― スピード感がありますね。
板倉: 「このチームならば」と参画するメンバーもいて、私もそのひとりです。私はスタートアップから移ってきて、今まではGoogle Workspace、現在はMicrosoft 365と、ファイルを扱う感覚に少し抵抗があるのですが、Miroはその摩擦を和らげてくれている部分もありますね。
クライアントとの議論、共有するものはすべてMiro上に
― 具体的にどのように活用されているのか教えてください。
板倉: リーンスタートアップの手順に則ってご支援をしていて、プロジェクトのスケジュールやピッチ資料、プレゼン資料などを全部1枚のボードに集約しています。
「課題はなにか?」といった問いも、ビジネスモデルを可視化する「リーンキャンバス」や「カスタマージャーニーマップ」なども時系列で横並びで置けますし、「顧客インタビュー」の内容なども一緒にしておけるので、お客さまもあちこち資料を探し回らなくていいメリットがあると思います。
ワークショップ形式で対面でホワイトボードに書きながら行うようなことは、すべてMiro上に揃っています。
コロナ禍以前は実際に集まってホワイトボードに付箋を書いて貼り出していたのですが…。今思い出すと、終わった後にレポートを書いていたのが信じられません。Miro上ならば議論の内容もすべて書き込まれていますからね。
門屋町: 私も同じような形ですね。
私は製造業のお客さまとご一緒することが多いのですが、「Miroを使うのは初めて」という方が多いので、最初は付箋を動かしたり、テキストを入力するワークを行います。動かし方さえ分かればすぐに慣れて、みなさん思い思いに考えをまとめ始めてくださいます。
門屋町: プロジェクトのログとしてもMiroは非常に役立っています。ひとつのボードに時系列で書いているので「こんなイメージでしょうか」と確認する内容に「いや、ちょっとここが違う」とコメントをいただいたり、因果関係をお客さまとその場で整理できます。ですから、認識合わせがスムーズに進むというメリットがあります。
それから、PowerPointで資料を作成したあとにMiroに取り込んでスライドを展開し、その場で画面を動かしながら説明やプレゼンができるのはありがたいと思います。PowerPointにフリーコメントを入れると画面が崩れてしまったり見づらくなるのですが、Miroならばページ送りせず全体を俯瞰できますし、お客さまも自由に意見を書き込めるのがいいですね。
なぜ、第三者のDX支援が必要なのか
板倉: サービスを形にしようとするとき、お客さまは専門家ですので技術的にできることや適用できそうな箇所を具体的、かつ詳細にイメージできます。しかし自然にできてしまうがゆえ、「では新しいサービスやプロダクトとして、誰に、どんな価値を感じてもらいたいのか?」と立ち戻るのが難しくなってしまうこともあります。
門屋町: 「プロセスの順序が前後しているだけ」の違いなんですが、サービスやプロダクトの先には、困っていたり、便利すぎて手放せない、といったユーザの姿を見ていただきたいと考えています。
「HOW」の部分は変えられますが、ニーズや課題は変えられないからです。
ですので議論が少しソリューションに傾きすぎたときは、ご一緒に描いてきたMiroの図のなかで、少し図の向きを変えたりして「このソリューションは誰のために提供するのでしたか?」と、水を向けて戻すお手伝いをします。
― 普段と異なる思考プロセスに慣れていただくための工夫はありますか?
板倉: 「入りやすさ」も考えますね。
例えば、我々がお客さまからまだ十分な信頼が得られていない段階でカスタマージャーニーマップをMiroのテンプレートから引き出すと、世界で使われているアプローチであることが伝わるので、安心して取り組んでいただけることもあります。
門屋町: お客さまが組織内で上司部下の関係にある場合などは、「そういう場ではありません」とグラウンドルールをしっかりお伝えすることで、ふだんの組織上の関係を離れられるように工夫しています。具体的には、Miroのアイスブレークで「場」を作り、自然と「できる」ようなプログラムを組んでいます。
― なるほど。それは第三者に仕掛けてもらわないと難しそうですね。
門屋町: 私達は半日程度の「コト化」や「DX」を学べるプログラムを持っていまして、そのなかでもお客さまが体験から気づきを得ていただけるような仕掛けを作っています。例えば、「自律的なチーム、アジャイルってどういうこと?」を体感してもらうMiroボード上のゲームがありまして、「ピンポン玉をお金に変えるゲーム」というんです。
ピンポン玉をお金に変えてアジャイルを体感
― ピンポン玉をお金に変える、ですか?!
門屋町: はい。
まず4~5人でチームを組み、100個くらいの丸い図形(ピンポン玉)を、左の箱から右の箱に移していただきます。その際、「ピンポン玉にチーム全員が1回は触わること」というルールをお伝えして、どのチームが一番早くピンポン玉を移し終わるか競っていただくんです。
これには少し意地悪な罠がありまして、左の箱から右の箱のあいだに、同じ箱を3~4つ並べた構図になっているんです。もちろん、最終的に全員が触ったピンポン玉が移っていればよいので、箱はいくつ使っても、使っていただかなくても問題ありません。
でも、最初からヒントをお出ししたりはしないんです。
― なぜですか?
門屋町: ご自身のチームで体感いただきたいからです。ゴールにはいくとおりものやり方が想像できますし、一番早く移せる方法もひとつではなく、正解がいくつもあるかもしれません。このシンプルなゲームを、ふだんの組織での関係性は忘れて取り組んでいただきたいんです。
― みなさん、どうされますか?
早く移すやり方を考え、合意し、試します。記録が伸びないかもしれません。
そうしたら振り返り、次にどうやったらもっと上手く出来るか話し合い、合意して、もう一度チャレンジします。もしかすると、チーム全員がとんでもなく単純なことを見落としているかもしれませんよね。だとしたらそれは、普段のご自身の組織で「見落としがち」な発想方法なのかもしれません。
自分たちで気づき、一緒に考えて、合意して、チャレンジして、やり直す。
この繰り返しをどんどんまわすサイクルの感覚をまずは知っていただきたいんです。
日本企業は、まだまだ新しいものを生み出せる
― Miroでこんなゲームが作れるんですね・・・!お客様のためにとても考え抜かれた仕組みという感じがします。
他にもMiroがお客様に役立っていると実感されることはありますか?
門屋町: 新規事業の部署は社内で理解を得にくいことがあると思います。
一般的には、「何をやっているのかわからない」「他の事業部の収益を使ってワークショップで遊んでいるのでは」といった疑念を持たれることがあるようです。でも、Miroのボードにはこれまで議論してきた内容や変遷が載っていますから、苦しみや試行錯誤の跡も見えます。モヤモヤした時期の空気も残っているかもしれません。プロジェクト報告も容易になり、社内での理解を得やすくなる効果があるのではないでしょうか。
― 新規事業はこうしたら成功する、というものはありますか。
板倉: そもそも新規事業をスケールさせること自体、とても難しいことです。教科書どおりには立ち上がりませんし、バーニングニーズも人によって異なります。ユーザーに課題をヒアリングしても、ある人は課題だと思っていても、また別の人はそうは思っていません。
それは社内でも同じで、ユーザーが受け入れてくれる事業内容でも、上司には全く響かないこともあります。最終的なプロダクトに落とし込んでいくには、私は少なくとも「強い思い」が必要だと思います。
失敗してフィードバックを受けて学んで、行ったり来たりを繰り返して、誰かに押しつけて終わらないためには、経営陣に経営と技術が分かる人がいて、受け止められることも大切だと思います。
DXという単語が廃れるまで、伴走したい
― これからBuildサービスでどんなことを成し遂げたいですか?
板倉: 今、日本では「DX」という言葉が流行っていますが、DXという単語が廃れるくらい、今我々がご支援しているような進め方がビジネスの中核にならないといけないと思っています。Miroもそれを支えるために欠かせないSaaSです。
門屋町: 日本企業は、世界中のユーザーがずっと使うようなものをまだまだ生みだせると思っています。「やらなきゃいけないとは思うけど、一歩踏み出せない。」「やりたいことの像はあるので、かたちにしたい。」というお客さまに、もっと伴走していきたいですね。
Miroは、世界で7,000万人が利用し、23万以上の企業が採用しているイノベーションワークスペースです。組織が生産的に業務を進めるための多くの機能とエンタープライズ水準のセキュリティを備え、日本では120万人以上に幅広くご利用いただき、TOPIX100の60%以上の企業に採用されています。試験的に導入してみたい、説明を聞いてみたいなどのご要望がありましたら、お気軽にお問合せください。