お客様事例インタビュー

パイオニアが変革を加速させるために取り入れた新たなプレゼンスタイルとは?

公開日 2022年10月5日 最終更新日 2023年11月6日

パイオニアが変革を加速させるために取り入れた新たなプレゼンスタイルとは?

カーナビゲーションシステム、カーオーディオなど車載機器に特化した電機メーカーであるパイオニア。近年ではモビリティプロダクト以外にもデータを用いたモビリティサービスを立ち上げています。しかし、商習慣や組織文化が違うためになかなか苦労している点もあるとか。その議論を整理して共通認識を作るためにMiroが役立ったと言います。パイオニアでモビリティサービス事業を率いる石戸亮さんに聞きました。  ※所属・肩書は2022年10月時点のものです。

新しいビジネスモデルをとりいれて変わるパイオニア

― 石戸さんが所属している事業部とミッションについて教えてください。

石戸: パイオニアは音響機器で大きくなり、2000年代以降はカーナビゲーションシステムやカーオーディオといった、車載用AV機器などのモビリティプロダクトで伸びてきました。OEMや市販でモノを作って売る企業です。ただ、ここ10年ちょっとでモビリティ産業にも外部環境の変化があります。

現在は「モビリティサービス」と称して、SaaSの通信型ドライブレコーダーや管理ソリューションを法人向けに提供するサービス事業を強化しています。この「モビリティサービス」の事業はまだ規模は大きくないのですが、2025年から2030年に向けて事業全体における売上比率を伸ばしていくと、中期経営計画でも定めています。

組織構造をSaaSを売るモデルに

― 企業変革のまっただなかで、どのような課題があったのでしょうか?

石戸: モビリティプロダクトカンパニーは自動車メーカーや小売店にカーナビやカーオーディオを納品し、チャネルに販売してもらうマルチチャネルビジネスです。一方、モビリティサービスカンパニーは全てではないものの直接BtoBのお客様と契約してスタートするため、今までの働き方や価値観と大きく変わります。

パイオニア株式会社 チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)
石戸亮(いしどりょう)さん ※所属・肩書は2022年10月時点のものです。

モビリティサービスカンパニーはハードウェアの売切りビジネスではなく、ハードウェアとソフトウェアのリカーリング事業ですので、それを「継続して使うことがお客様にとっての価値」となることで成立するビジネスです。契約を交わしハードウェアを取り付けしていただいたら終わりではなく、お客様が機能をフル活用できるようにサポートし、それにあたり障壁や課題があれば迅速に改善し反映していくための組織構造や仕組みが必要です。

従来のモビリティプロダクトとどちらが良いということではなく、そのビジネスの提供価値に適した組織やスキル、考え方を選ぶべきです。この新規事業の立ち上げや組織変革にあたって戦略や実行を考えなければなりませんでしたが、2020年からコロナ禍に入り物理的に集まって会議室で議論をしたり合宿したりができなくなってしまいました。

リモートワークでも新規事業を立ち上げる

― 具体的に、どのようなポイントで困っていたのでしょうか。

石戸: 当時、私はスマートフォンを活用した物流企業や運送業界に向けたMaaSサービスの新規事業をリードしていました。

モビリティデータから、大型車両が停車できる場所や、物流施設の入り口や搬入口を特定する技術をパイオニアは持っています。それをユーザーに価値として提供するサービスを作る構想がありました。ただ、パイオニアは車載器を販売し、それをコントロールするアプリを作る経験はありましたが、アプリ単体でグロースする経験がまだありませんでした。

混成チームの共通言語をどうやって作るか

また、私以外のメンバーを見回すと、デザイン部門や子会社から集まった混成チームだったために、共通言語がない状態でした。この手の新規事業を行なう場合には、コンセプトやビジネスモデル、調査、ターゲット、デザイン等、非常に議論が多岐にわたり発散するものです。

通常ならば、集まってポストイットに書いてホワイトボードに貼って……とするものですが、顔を見合わせながら議論ができない。そこで導入したのが、オンラインホワイトボードのMiroでした。

― Miroを使ってみて、どう変わりましたか?

石戸: オンラインでも議論が進みやすくなりましたし、全員が同じボードを見ているので共通言語を持ちやすくなりました。

特に重宝しているのは、「テンプレート」が非常に充実していること。マインドマップやマーケティング、マネジメント、カスタマージャーニーなど事業戦略や実行を進めやすくする「型」を、Miroではすぐに呼び出して使うことが出来ます。

同じ「型」を見て議論することで、バックグラウンドが違うチームでも、認識を合わせていくことができます。

なぜMiroを選んだか

― 他にもオンラインでコラボレーションできるツールはありますが、石戸さんは、なぜMiroを選んでくださいましたか?また、みなさんは使ってくださっていますか?

石戸: 私自身は、G2のGridでその分野のナンバー1か2を見て選定することが多いんです。Miroの場合は、何もしなくても社内で自然に利用が広がっています。(PCの画面を見ながら)本当に、私の知らないボードがたくさんありますね。

※G2は米国最大級のソフトウェアレビューサイトで、Miroはビジュアルコラボレーションプラットフォームのリーダーに位置付けられている。

世界のビジネスパーソンの仕事の進め方を盗め

世界中の優秀なビジネスパーソンのユースケースが入っているので、使いこなせるとビジネススキルは非常に向上すると思います。※Miroには標準テンプレート以外にも利用企業が自社で使っているテンプレートをシェアするコミュニティMiroverseがあり、Miroのユーザーであれば誰でも無料で利用できる。

大手企業の新規事業ではモックやプロトタイプにお金を払って外注していたりもしますが、うまく使いこなせばその必要もなくなるはずですし、スピードアップもします。

以下のように“customer journey”や”App”、“OKR”など業務で使いそうなキーワードでテンプレートを探すと複数のテンプレートが出てくる。石戸氏はこれを世界中の優秀なビジネスパーソンのユースケースと言っており、それを見るだけでも楽しいという。

内なる道標として使う

石戸: Miroは「どの戦略から考えるのか」「企業理念とどう繋げるのか」といった論点を考えるときに良いですね。私の場合は事業構造を支える要素をMiroのボードにマインドマップに書き出したものを月1回くらいは眺める時間を作り、自分は道に迷っていないか、なにか見落としがないかを確認しています。このマインドマップは、周囲の先人や有識者にたまに見せ、意見をもらってブラッシュアップしたり、時には共有したり、共創していくような使い方をしています。

プレゼンよりも経営陣と話しやすい

昨年9月に11月から直販営業立上げのミッションを急遽任されることになりました。社長直下でしたので、直販営業組織の立ち上げを進めるために必要な変革や課題について話すとき、こうやって全体像を構造化してMiroに書いておくと経営陣や直販営業立上げに関わるメンバーなど、いろんなステークホルダーと議論する際にも良いんです。

皆さんも社内で上司や経営陣から「シンプルに説明しろ」と言われることがあると思います。

何事もシンプルさは大事ですが、変革期には、組織や業務に変化が及ぶ範囲は多岐に渡ります。

パイオニアもまさに、従前にはなかったことにチャレンジしているところですが、このような局面では、その行間にある考え、背景、補足情報など、様々な要素が複雑に連動する各論を蔑ろにしないことが、むしろスピードや手戻りの少ない決断につながります。

具体的には、重要なポイントについて「直販率を向上させるには何が重要なのか」「今のうちに必要なアセットは何か」「業務システムの整理」「セールスポリシーをどうするのか」と書き出して、「直販にしたら利益率が上がるというシンプルな話ではない」などと、ボードの必要な部分にズームインとアウトを繰り返して説明するんです。

地図のように一枚に

ほかにも、「マーケティング部」と「直販部隊」の役割についてや、SMBやエンタープライズ、それとも業種業態で分けるのか、中長期でも3年後、5年後どうなっているのかなどをボードに残しておく。

その横に役員に説明した際のスクリーンショットを入れ、「BtoBの直販部隊をどのように揃えていくか」「その際、営業の業務フローはどうするのか」「マーケティングからインサイドセールスにリードが渡る際にどのようにしていくのか」など様々な論点や関連資料を、地図のように一枚に収めています。

Miroは、全体からしたら各資料がどんな意味を持つのか、どんな位置づけなのかが自然と分かるようになっています。

これをもしパワーポイントで順番に説明していったら、数十枚の資料になるでしょうし、経営陣が聞きたい内容までなかなか辿り着かず、質問の箇所まで大幅にスキップして発表しなければならないこともあり得ます。ですが、Miroであれば「これは決定事項の発表ではない」ということが直感的に理解してもらえます。

― とても興味深いです。

社長もMiroでの私のプレゼンを見て、「本題とは異なるところではあるが 、このツールは面白い」と言ってくれましたね。もちろん、然るべき場面で概要や背景を説明するときにはパワーポイントも使っていますよ(笑)。

走りながら決めて、営業の数字は2倍に

― 導入の効果など数字でお話いただける部分はありますか?

石戸: 2021年下半期の直販営業の数字が上半期の2倍になりまして、Miroの直接的な貢献かまでは分かりませんが、Miroによって業務の整理やイメージを共有できたために、経営陣が考える戦略や経営指標と、現場での目的と目線を合わせることができたことは良かったと思います。

これまでのパイオニアの営業組織は代理店やパートナーとの付き合いが多かったため、どうしてもリソースや思考がそちらに向きます。直接お客さんに需要喚起したり、認知をしたり、商談をしたりという行動が中心の組織文化ではありませんでしたから、「どの業種業態に売っていくのが最適か」を判断するための顧客の直の声や事例も溜まっていませんでした。

私自身が営業の直販部隊を見ることになったのが、2021年の9月です。そこから11月には営業組織を立ち上げました。たった2か月弱で共通認識を作り、課題整理を行うことは、Miroだからこそ、やりやすかったと思います。

営業部隊の立ち上げの日付だけは決まっていたので、「走りながら決めましょう。最低限決めなきゃいけないのはココとココです」というように進めていきました。

変化のときこそ大切な、あるひとつのこと

変化のときには、経営と現場の透明性が大事です。お互いに何を考えているのかを理解し合えていないと、ふと経営陣が出したメッセージが朝令暮改に思えて、悪気がないのにニュアンスがズレてしまい誤解に繋がる。Miroでは現在の議論も過去の議論もすべてボードに残しておけますから、振り返って話もできます。

MBOの人事制度であるパイオニアにOKRを

― 石戸さんは、OKRの組み込みにMiroを活用しているとnoteに書いてくださいましたよね。MBOの人事制度である企業でOKRの運用を開始するというのは希少なご経験だと思います。少しお聞かせください。

あるべき姿に向けて、主語を会社の【既存のルール】ではなく、【市場】や【顧客】や【自社サービスの成長】などを主語にして、会社の既存のルールさえも変えていくことが変革の要素の一つだと思ってます。

老舗企業がOKRを始めた話 石戸亮

品質保証部門とカスタマーサポートのOKR策定の初期段階でMiroを使っていて、あるべき姿のObjective(O)に対して、成果指標のKey Result(KR)の部分を自分で入力して設定しました。実際のOKR運用では異なるツールを使うことになりましたが、初期段階でOKRを議論するには非常に重宝しました。

石戸さんが利用したMiroのOKRテンプレート

カスタマーサポート系の部署はOKRのObjective(O)をちゃんと定義しないと「何件電話に出ます」といった目先の作業的な数字に設定しがちです。

― 分かります。事業部の目標数字の逆算だけが下りてくるような。

ですよね。ですが、本当は「お客さまの満足度を上げる」が目的ならば、電話に出る件数を増やすのではなく電話を減らすことが重要ですし、そのためにFAQを改善したり、できる限りの属人性も減らし、自己解決を促すべきであり、「なんでこの問い合わせが来るのか?」「なんでこんなに時間がかかるのか?」などの根本を踏まえて業務フローを変えることが必要ですよね。

Miroならばその議論をするときにも他の部署やチームの目標も同じボードに入っているため、他のファイルを参照する必要がないのが良いですね。得てして目標設定のファイルは個々人で色々と入力してファイル管理をするので、どれが最新のものか分からなくなりますから。

― OKRでの透明性って、やる気がでますし、思わぬところで組織を越えたコラボレーションが生まれたりしますよね。パイオニアの幹部陣もOKRにポジティブだったと読んで、柔軟で素晴らしいと思いました。

パイオニアだから、できることがある

― 今後、石戸さん自身がどのようなことに取り組んでいきたいか教えてください。

石戸: 構想段階で、私たちもまだ出口は見えていませんが、よりデータを用いた減災の支援ができないかと思っていたりします。パイオニアには全国何百万台のドライブレコーダーから収集した映像があります。老朽化して保守メンテナンスが必要なトンネルや橋を割り出したり、がけ崩れが起きそうな道路の斜面などを見つけることなどはできるように思います。

Unsplash.Photo by KS KYUNG

また、車で訪問して営業する方も多いですが、その分野のセールステックは日本ではまだ未開拓です。製薬会社ではMRの行動改善などが行われていますが、営業ルートや訪問先への活動などはデータを貯めれば、最適解が見つけられるように思います。

世界的に持続可能な社会の実現といったテーマがあるなかで、パイオニアは車両にまつわる様々なデータを保有していますので、パイオニアのルート最適化技術と特許を取得しているエネルギー効率推定技術(燃費/電力消費率)との組み合わせにより車の移動に伴うCO2排出削減をサポートするクラウドプラットホーム“Piomatix for Green”についても先日発表しています。

もっと言えば、業界が手を組んで標準のデータスキーマを作り、パイオニア以外のメーカーが持っているデータも蓄積することができれば、さらに発展的な活用が可能かもしれませんよね。

日本のデジタル人材の流動性への違和感

そして、私自身は日本の製造業メーカーの価値向上に取り組みたいですね。

ここ10年でIT企業が採用を強化して組織を大きくしているので、日本のハイクラス人材も年収の高さや環境に引かれて、GAFAやテックジャイアント企業に吸い込まれていきました。すると、メーカー側にデジタルに詳しい人材がどんどんいなくなるのです。

その人材の流動性に違和感を覚え、私はパイオニアに来ました。

日本の製造業メーカーの価値は、もっと高めることができる

製造業の時価総額は今低く評価されています。

他方で、今SaaSの事業は売上10億円あれば8倍~10倍、100億円の時価総額が付きます。今後SaaSのバリュエーションは多少下がると思いますが、製造業のなかにSaaSの事業があればより時価総額がつくようになる。変革の過渡期ですが、それをリードする存在でありたいと思いますね。

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