お客様事例インタビュー

「使われるデザイン」実現でグッドデザイン賞を受賞したNTTコミュニケーションズの取り組み

公開日 2023年10月16日 最終更新日 2023年10月26日

「使われるデザイン」実現でグッドデザイン賞を受賞したNTTコミュニケーションズの取り組み

日本の通信ネットワークをリードするNTTコミュニケーションズ株式会社。IP電話やインターネットの通信サービスだけでなく、クラウドやIoTなど様々なサービスを展開しています。

そんな同社は、理想的な社会のあり方を描きけるためにデザインの力を組織的に活用しており、中心組織となるイノベーションセンターでは、Miroをプラットフォームにしてデザインリサーチや自社プロダクトのUI/UX改善にも取り組んでいます。

デザイン組織として2023年度グッドデザイン賞を受賞したデザインスタジオ「KOEL」の福岡 陽さん、徐 聖喬さん、山本 健吾さんに詳しくお話を聞きました。

新しい時代の社会インフラをデザインする

― まず、所属する事業部の概要とみなさまの役割を教えてください。

福岡: NTTコミュニケーションズ内には、営業や開発組織とは別に「新しいイノベーションを起こすための組織」である「イノベーションセンター」があります。私達はさらにそのなかのデザインスタジオ「KOEL」に所属しています。

福岡: KOELの役割は、新しい時代の社会インフラをデザインすることです。NTTコミュニケーションズの持つ最先端のテクノロジーと世界最大規模の通信ネットワークを駆使して、教育、働き方、ヘルスケアなど様々な領域に常識を「超える」新たなコミュニケーションを創り、社会全体の想像力を解放する役割です。このようなセミパブリック(準公共)領域におけるデザイン活動を行う組織として評価いただき、KOELは2023年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

私自身はUXデザイナーとして、顧客体験やプロダクトの戦略を考える活動をしています。

福岡 陽さん

山本: 私はデザインリサーチャーを担当しています。KOELにジョインする前はベンチャー企業でUXデザインをしたり、オフィス機器メーカーで新規事業立ち上げのためのリサーチを行っていたりしました。

山本 健吾さん

徐: 私はUIデザイナーとして、プロダクトのUIデザインやビジュアルデザイン全般を担当しています。前職のデザイン制作会社では、紙からデジタルまで、さまざまなクライアントワークに携わってきました。これまでの制作経験を活かして、KOELでは幅広いデザインプロジェクトに取り組んでいます。

徐 聖喬さん

一緒に売り方や接点も考えられるデザイン組織

― KOELではどのような活動をされているのですか?

福岡: KOELはNTTコミュニケーションズ内の事業上の課題について依頼を受けて、課題解決やデザイン力の底上げを行っています。デザインを通じて解決策を見つけることや、組織の課題に向き合いながら進めることなど、さまざまな案件に取り組んでいます。

徐: すでに技術やアプリケーションがあった上で、市場に出していくフェーズで「サービスとしての売り方」や「ユーザーとの接点をどう持つのか?」という点について考えていく案件もあります。サービスが「誰のためにあって、どんなベネフィットを提供するものか?」をしっかり理解した上で、ターゲットユーザーがその価値が納得し受け入れられるように、関係部署を巻き込んで議論を重ねます。ときには、社内の営業チームがお客様に説明しやすいように、サービスのリブランディングや提案資料をデザインするなど、インハウスのデザイン組織として幅広く他部署を支援する立場となっています。

福岡: KOELでは社内向けにデザインに関するワークショップを行う活動もしているのですが、我々が依頼部門のプロジェクトを通じて様々なフェーズや形態で関わることは、依頼部門にとってもデザインの重要性を学ぶ機会にもなります。そして次も適切な場面でKOELに依頼してもらうことで、更にデザインが浸透していきます。

徐: 例えば、リリースが予定されているアプリ開発がデザインより先行している案件がありました。順序としては最初から関われるほうが望ましくはありますが、KOELが途中から参加し、プロダクト全体のデザインを整えることになりました。結果、リサーチから体験設計を経てUI全般を改善し、ロゴにもプロダクトの世界観を反映できたので、より市場に受け入れられやすい形でリリースすることができました。こうしてリリース体験もよくなることで正の循環がまわり、デザインの重要性が組織に浸透していきます。

山本: 私達のなかでは、「デザインをインストールする」という言葉で表したりします。例えばエンジニアだけで開発するプロジェクトではエンジニア目線だけで作っていることに気付かない恐れがありますが、そこに我々が参加することで必要なリサーチは何かを一緒に考えて実施し、ユーザーのニーズに寄り添っているかを探索したり検証したりすることができます。

福岡: デザインには、もともとNTTコミュニケーションズが持っている技術力を、社会に対して最大限に発揮できるようにする力があると考えています。

Miroはプロジェクトルームがオンライン上にある感覚

― どのようなきっかけでMiroを使い始めたのでしょうか?

福岡: Miroが導入された当時は私はまだ入社していなかったのですが、ちょうどコロナ禍に入る前後で「NTTコミュニケーションズの経営理念を作ろう」という動きがあり、KOELの前身の組織がメンバー100人ほどを集めてワークショップを行うなどしていました。その理念策定のワークショップ自体はオフラインのワークショップでしたが、ロケーションが離れた場所にスチレンボードを持っていくのは大変ですし、大量の情報を物理的に整理をするのは煩雑だということで、Miroを使い始めたと聞いています。

― 現在のKOELではどのような使い方をしているのでしょうか?

山本: 対面における「プロジェクトルーム」をオンライン化したイメージが一番近いと思います。スケジュールやディスカッションの内容などプロジェクトに関わる情報は一通りMiro上に集められることが多いです。インタビューリサーチにもMiroは活躍します。私がリサーチしてインタビューした内容は付箋のひとつひとつに書かれており、要素を抽出し整理した単位でグルーピングしてMiro上のフレームにまとめています。ボードには写真や画面キャプチャなども貼り付けていきますし、関係者全員で情報量を担保した状態で話し合えます。

インタビューリサーチでは事前情報の整理からインタビュー内容、分析、レポートのドラフトまでをMiro上で一気通貫で整理する

山本: ユーザーの声は想定どおりだったか、意外な気づきがあったなど、各メンバーが気になったところにマーカーを引いたりしながら共有しています。デザイナーだけでなく、一緒にプロジェクトを進めている事業部門がコメントを入れることで多様性が生まれ「そういう視点があったのか!」と、思いがけない発見ができることがあります。過去の状態をそのまま残しながら、次の場所にコピー&ペーストして全く別の視点で整理し直し、手軽に変更を加えられるのは、デジタルのメリットです。

デスクリサーチのまとめにおいてもリンクや画像、テキストなど複数のメディアを織り交ぜて整理できるMiroの強みを活かしている

徐: お互いに内容を確認するタイミングが違っても、同時にプロジェクトルームに付箋を貼っていくような体験が再現できるのもいいところです。直接対話をしなくてもコミュニケーションが生まれます。

私達のようなデザイナーだけが扱うAdobeのデザインデータや、事業部門が主に扱うPowerPointなどのOffice系ファイルを、いくつもの仕掛り中のプロジェクトに合わせて行ったり来たりするのは大変です。Miroボード上にリンクを置いたり、画像に書き出して綺麗に整列する機能を使えば、一気にプロジェクトに関する資料がMiro上で俯瞰できます。

引き継ぎ・フェーズ移行がスムーズに

山本: 我々は一人が複数の案件に同時に関わるのですが、ひとつの案件であっても、必要な専門領域が異なるフェーズに移ると担当間で引き継ぎを行うことがあります。例えば過去には、私がリサーチを担当した案件が、次のデザインフェーズでは徐が担当したことがありました。徐がリサーチフェーズの全体像や詳細を把握し、その横にデザインフェーズの内容を書き足してプロジェクトが継続していく。こうしてプロジェクトで必要な内容が増加しても、すべて一箇所にまとめられるのがMiroの嬉しいところですね。フェーズが移ると、同じMiroボード上で見るところもどんどん移っていきます。

徐: Miroなら記録の細かな点にフォーカスすることも出来ますし、引いて全体像を視ることも可能です。レビューなどをしてもらう際にも、自分の思考に合わせてフォーカスできるのがいいと思います。

山本: UIデザイナーやUXデザイナー同士の難しかった会話もMiroによってやりやすくなりました。Miro上に議論の記録があるので、あとからプロジェクトに入ったメンバーも過程が理解しやすく、常に最新の情報がMiroにあります。

事業部門とスムーズにやりとりするには

― サービスロゴのようなデザインはどのように出来上がっていくのですか

徐: ロゴのデザインを考えるときは、いくつかパターンを出しながら議論をしていくことが多いのですが、思考のプロセスやアイデアの種になるようなものを、Miro上に全て出すようにしています。まずはサービス主幹部門に完成したロゴのイメージのヒアリングを行うために、「クールな方がいい」とか「スタイリッシュさが欲しい」など、いくつかのワードを用意してスライダー上に星をつけてもらいます。

ヒアリングを行う際にキーワードをいくつか事前に準備しベクトル上に星をおいてもらうことで、
ロゴのイメージを最大限に引き出してから制作のプロセスに入る

徐: それをもとに、市場にすでに存在するロゴの中から雰囲気が近いものや参考にできるものを集めて「ムードボード」を作成します。いくつかロゴデザインの案が見えてきたら、ラフスケッチやAdobe Illustratorで作ったロゴをMiro上に貼り付けて、プロジェクトメンバーで付箋を貼ったりして方向性を絞り込んでいきます。

KOELでロゴ開発を行う際の一般的なプロセス
参考になるアイデアや思考のプロセスを全てMiro上に並べ、プロジェクトが終わったあとでもロゴの制作過程を把握できるようにしている

デザイン案を広げて見られるので、ピンポイントで好みが言いやすいですし、方向性が分かれたり絞られたりする中で、関連するものに線を引いたり近くに寄せて書いたりして、思考のプロセスを残しておけるのもいいところですね。制作の過程が見えることで、直接関わらなかった人から見ても、「なぜこのロゴになったのか?」という疑問に対して、納得感が得られやすくなると思います。

― デザイナーとしての専門的な仕事を進めるのと、事業部門の方とスムーズなやりとりを両立するために、どのようにMiroボードを使い分けていますか?

徐: 専門性の高いデザイン制作業務は、KOEL内でAdobe製品やFigmaで行いますが、作成したものを誰かに見てもらいたいときはMiroを使います。これは、ビジュアルデザインがデザイナーの独りよがりにならないようにするためです。頻繁にチーム内でレビューして客観的なフィードバックをもらうようにすることで、KOELとして最もお薦めするデザインを事業部門に提案できます。

Miroでの共創

― 事業部門の方が、使い方に戸惑われることはありますか?

福岡: 私がワークショップのファシリテーションを行うことも多いのですが、Miroは直感的に使えるので、触ったことがない方でも少しの説明ですぐに使えるようになります。その際によくやるのは「今のみなさんの推しはなんですか?」と聞くものです。付箋に今ハマっているモノを書いて発表してもらい、それを見ながら雑談すれば、Miroの使い方も分かりますし、雰囲気も和みます。「付箋にお名前を書いてください」というのも、主催者には出席確認の代わりになり、参加者にはMiro上での付箋の書き込み方や動かし方のウォーミングアップになります。

「一緒に創っていく」共創の意味では、リアルのワークショップだと「その場で創る」になりますが、Miroでは参加されなかった方にも結果をそのまま共有することができますから、他のKOELメンバーへのスキルトランスファーが進みやすいです。

KOEL内でMiroを使用したワークシートの作り方を共有している
複数の参加者が同じシートで作業できるMiroの強みを活かしてオンラインでもスムーズなワークショップを実現

営業提案資料にもデザインを

― 冒頭で、お客様への提案資料を作り込むことがあるということでしたが、デザイナーが制作するのは理に適っていると思う一方で、一般的なプロセスではないように思います。どのように既存プロセスに関わっていったのでしょうか?

徐: 一般的に、営業提案資料は事業部門の営業担当者が作ることが多いと思います。NTTコミュニケーションズは通信やデータビジネスに関わるサービスが多いため、技術者には理解しやすい仕組み図であっても、提案を受けるお客様の立場やバックグラウンドによっては情報が正確に伝わらない恐れがあります。

営業提案資料とは、営業が自ら語りやすく相手にも伝わるものであるべきなのと同時に、見る人の役職やリテラシーに配慮して分かりやすいものでなければ、最終的にはお客様にとってのサクセスや売上増などにはつながりにくいと思います。

事業部からの最初の依頼は、「サービスの営業提案資料をアップデートしたい」という要望だったのですが、プロジェクトを進めていくうちに徐々に「このサービスの売り方を一緒に考えてほしい」という相談に変わっていきました。そこで改めて、サービスのコンセプトやターゲットユーザーを特定し、競合他社との比較を行った上で、「NTTコミュニケーションズが提供する意味」を深掘りして、サービス全体をリブランディングすることになりました。

その一環として、営業提案資料もアップデートすることになり、こうしてKOELがデザインした資料が、そのサービスの標準提案書として社内で利用されるようになりました。

山本: 相談が新たな発見や進展を生むことはありますね。たとえば、「高齢者向けにこんなアイデアを考えているからリサーチしたい」という依頼を受けてリサーチを行う過程で、「こんな形でアイデアを変えたら、学生がユーザーになるのではないか?」という気づきを得る、といったことです。仕様を大きく変えなくても、リサーチ結果をちょっと視点をずらして見ると、新たな市場でユーザーの課題解決になるようなケースですね。その際にも、Miroで気づきを残していけるので便利です。

「使わせるデザイン」ではなく「使われるデザイン」を

― 今後のKOELの展望について教えてください。

福岡: 例えば何らかのインセンティブを与えてサービスを使ってもらえるなら、ビジネス収支としては成功に見えるのかもしれません。でももし、使う人が渋々使っていたとしたら、それは何だかおかしいですよね。ですから私たちはこれからも、「使わせるデザイン」ではなく「使われるデザイン」を提供していく組織でありたいと思っています。

山本: NTTコミュニケーションズは、社会インフラの会社でもあります。今は社会がある状態で固定されるような時代ではないので、常に変化に対して寄り添うインフラであることが重要なのではないかと考えています。Miroで同じ画面を見ながら新たな発見があると嬉しくなるように、我々のサービスを使う人にも、生活のなかで「面白い!」「楽しい!」と感じてもらいたいと考えているので、そのためにもリサーチが「事業提供者としての眼差し」として活きるようにしていきたいですね。

徐: 愛される社会インフラは、自然に生活に溶け込んでいるはずです。「気づいたら無意識にアプリを開いて見ている」というようなものも、インフラのひとつではないかと思います。ユーザーの方が「どう使うのか」、事業提供者としては「どう使ってもらいたいのか」を考えることは、未来の暮らしを想像することにもなっていると思うので、「相手が受け止められるもの」をデザインする想像力を大事にしたいと思っています。

福岡: 社会インフラに関わる様々な社員やステークホルダーの考えを、KOELが提供価値を言語化して意図や意志を引き出す。そしてそれを活かせるように働きかけ、さらに一体化して事業を提供できるようにする。そうすることで、社会インフラをもっと理想的に、「受け入れやすい」形に整えることができるはずです。皆さんと一緒に「愛される社会インフラ」を創っていきたいと思います。

社会インフラに、「使われるデザイン」を。

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