NECがコロナ禍前より洗練されたアジャイル開発を実現した工夫とは

公開日 2022年8月22日 最終更新日 2022年9月9日

NECがコロナ禍前より洗練されたアジャイル開発を実現した工夫とは

アジャイル開発の現場では壁やホワイトボードに意見を書き出し、各スプリントに応じてゴールを決めて開発を行っていきます。そんな現場でMiroを使いながら、コロナ禍前よりも洗練されたアジャイル開発を実現していると語るのは、NECのSI事業推進部門 ソフトウェア&システムエンジニアリング統括部でアジャイルコンサルタントとして活躍している寺田達彦さんと長達也さん。どのようにMiroを使い、アジャイル開発を進めているのか聞きました。

― 所属している事業部について教えてください。

寺田: 私たちはソフトウェア&システムエンジニアリング統括部という部署に所属しており、ソフトウェア開発における効率化やリスク低減のためのエンジニアリング、特に私と長のチームはアジャイル開発を推進するためのメソドロジーとテクノロジーを展開しています。

NECグループ内だけでなく、NECのお客さまへアジャイル開発を導入するための支援や、継続的に推進していくためのコンサルティングやコーチング、開発管理環境導入など各種サービスを提供しています。

アジャイル開発を適用する際、日本企業のお客さまの多くはこれまでウォーターフォールで開発されてきたので「開発を管理する環境」を気にされる方も多いです。そこで、Miroや連携する管理ツールをご紹介するケースも多くあります。

アジャイルコンサルタント 寺田達彦(てらだたつひこ)さん

私自身はNECに入社後、物流領域のシステムエンジニアを経て、開発環境領域に関するパッケージ商品の販売促進や開発を行っていました。それから全社のクラウド開発基盤を提供するサービス運営を担当したあと、現在のアジャイル開発の推進活動に携わっています。

長: 私は新卒入社2年目で、入社当初より寺田のチームで働いています。アジャイル開発の導入・効率化の支援だけでなく、プロジェクトの開発管理をより効率化するためにMiroやJiraまた他のクラウドサービスとの連携ツールを開発・改修していく、施策そのものの創出も担当しています。

アジャイルコンサルタント 長達也(ちょうたつや)さん

コロナ禍で突然失われたプロジェクトルーム

― アジャイル開発を行う際にどのような課題があったのでしょうか?

寺田: 私たちはアジャイル開発の手法にスクラムを採用していて、スクラムガイドで定義されるスクラム理論には「透明性」「検査」「適応」の3つの柱があります。

スクラムの重要3要素

  • 透明性・・・プロセスや現在の状況、課題が誰にでも分かるようにする
  • 検査・・・期待される成果をあげるために今の進め方、状況で問題ないか常に確認する
  • 適応・・・検査の結果、もっと良い方法があれば試し改善していく

2020年にコロナ禍に入る以前のアジャイル開発といえば、プロジェクトルームに全員集まり、ホワイトボードや壁に貼り付けた模造紙などに付箋を貼り出して課題やタスクを整理しながら進めていました。

担保できていた透明性

ですので、プロジェクトメンバーもプロジェクト外の人でもプロジェクトルームに行ってホワイトボードや壁を見れば、そのプロジェクトの全ての状況が把握できる、という形で「透明性」は担保されていたのです。

ところが突然、物理的に出社ができなくなってしまったため、スクラムの大切な概念のひとつである「透明性」の担保が難しい状況に陥りました。しかし、ソフトウェア開発を止めるわけには行きませんし、「透明性」を担保する場所は私たちにはどうしても必要でした。

Miroとの出会い

そこで、模造紙やホワイトボードをデジタルで代替するものを探すなかで、Miroに出会うことになりました。コロナ禍に入った当初はまだ対面でのアジャイル開発がいずれ戻ってくると考えていましたが、状況が長引いても対応できるよう、Miroに出会うことですぐに全プロセスをデジタルに完全に置き換えることに決めました。

プロジェクトルームから、フルリモートへ

ちょうどその時期、私たちはNEC内の開発現場におけるアジャイル開発の導入の課題がプロジェクトの立上げ期間と質にあると考えていていて、その課題に対して最大2週間で立上げを完了させるスタートアッププログラムをまとめ上げていましたが、この時期と重なり、このプログラムで行われる全てのアクティビティ、タスクをMiro上で再現するようにしました。

Miroの表現力で可能、もしくは対面よりもっと体験が良くなることは積極的に取り入れて、アジャイル開発立上げの支援をフルリモートで実施するという新たな領域にチャレンジしたわけですが、それによって私たちはプロジェクトルームでの対面からフルリモートに転換するという課題解決だけでなく、実はさらにもう一つ重要な知見を獲得することができました。

最大でも2週間に

― どのような知見を得られたのですか?

以前までアジャイル開発の立上げを支援する際には、オンデマンドで現地に赴き、お客さまの開発の進め方の状態や状況に合わせてカスタマイズしながら伴走する形で進めていました。そのため10のプロジェクトがあれば10通りの進め方になることは私たち自身が当然のことだと考えてきましたし、ケースによっては1ヶ月以上かかる場合もありました。

ところがやり続けているうちに、ひとつのMiroボード上にプログラムを凝縮すると、どんなお客さまでも最大2週間で同じプログラムコンテンツでやりきれると分かってきたのです。

左側のグリーンの部分が、NECが開発した独自ノウハウであるアジャイル開発スタートアッププログラム。Miroをフル活用しながら、最大2週間で実現できるようオールインワンで設計されている。支援対象のチームが「スクラム」の重要な考え方である「タイムボックスを守る」習慣に馴染めるようデザインされており、再現性やチームビルディングの体験をより高めるべく改善が加えられている。

スクラムで大切な「タイムボックス」という概念

スクラムにはもうひとつ大切な考え方があり、「タイムボックス」と呼ばれていますが、開発のプロセスを自分たちが決めた一定の決まった期間に区切って作業を進めることです。もし、どんな領域のビジネスであってもフレームワークに沿うことにより最大2週間でアジャイル開発の立上げが可能になるのならば、それは開発手法上でも重要な意味を持ちます。

― なるほど、フルリモートで可能になっただけでなく、再現性のあるパッケージプログラムになったのですね

再現性のあるパッケージで、お客さまに高い品質の支援を

― 具体的にはどのようにMiroをお使いいただいているのでしょうか?

長: スタートアッププログラムのMiroボードには、お客さまがアジャイル開発を立ち上げるために必要なアクティビティが詰まっています。テンプレートに沿って進めていくなかで、ビジネスやプロジェクトに必要なものをひとつずつバックログに投入していきます。スプリントで行うタスクの洗い出しをするスプリント計画も、Miroの共同編集が非常に向いています。

すべての議論はMiroで完結

寺田: 立上げが終わり、開発に入った後もすべての議論はオンラインでMiroを使って行います。計画や仕様の詰め、振り返りといったスクラムの実践に必要なプロセスには、チーム全員が議論に参加することが必要です。

先ほど長が言ったようにスプリントの中で必要なタスクについてもMiroボード上で議論し、洗い出します。その後は、他のクラウドサービスとの連携シーンの一例ですが、開発を始めるのに十分なタスク単位まで抽出できたらCSVに出力し、1タスク1チケットとしてJiraに半自動的に反映させることができます。

※スプリント・・・「タイムボックス」の概念に沿った短い固定の開発期間のことで、一般的には1~4週間。

コツとして、議論が必要なことはMiro上で完結させ、進捗管理で利用するのはJiraと、ツールに適した役割分担を明確にして使い分けるようにしています。スプリント終了後の振り返りの過程では、全員の発言が重要となるので、再びMiroが登場します。

Jiraとの連携でアジャイル開発をより有意義に

― MiroとJiraの連携部分についてもう少し詳しく教えてください。

長: MiroのプラグインであるJira Cardsなどを利用してMiroとJiraを双方向で連携できることは知っていましたが、私たちが開発した連携ツールでは、あえてMiro→Jiraへの一方向に流れを固定してツールの役割を分けています。

タスクの洗い出しは共同編集に適したMiro上で付箋やカードなどを使って行います。その際に、タグなどでJiraチケットに必要な属性情報の整形まで完了させます。それから連携ツールを利用して、一括でJiraチケットに自動変換し、以降の開発管理はタスク管理に適したJiraを使います。

MiroとJiraの連携

  1. タスクの洗い出し・・・Miroの付箋やカードで行う
  2. タスクの属性情報・・・Miroの付箋やカードにタグをつけ、Jiraチケット変換の準備完了
  3. タスクの変換・・・連携ツールでJiraチケットに変換
  4. タスク管理・・・Jiraで行う

これによりアジャイル開発のメリットである、インタラクティブな議論による市場変化への柔軟な対応と、スピード感ある開発を、フルリモート下でも効率的に行うことが可能です。

寺田: 私たち自身がアジャイル開発を推進する立場でもありますから、お客さまの声をお聞きしながら、この連携ツールもアジャイルで改善を続けているところです。私たち自身も、このMiroとJiraの連携ツールを活用することでタイムボックスを守りながらも議論の質を落とすことなく仕事を進めることができています。

Miroを使うことで「タイムボックス」を守り、さらなる「透明性」も確保

― Miroが開発に貢献している部分があれば教えてください。

ひとつのキャンバスにまとまる情報

寺田: ひとつは、オーバーヘッドが少ないゆえに「タイムボックス」を守りやすいこと。例えばスプリント計画でタスクを考えるとき、決めた時間内に作業を行わなければいけません。しかし、資料の画面を切り替えて「これどうする?」と議論をしていたら、それだけでも非効率で時間内には終わらない可能性があります。

しかし、Miroボード上でタスク出しを行う場合は仕様の詰めの過程や結論がひとつのキャンバス上に見えているので、メモ情報が多くなりがちなアジャイル開発を進める上では非常にやりやすいと思います。いちいち画面を切り替えずに議論が進むのが大事ですね。

透明性があるから、納得できる

もうひとつは、やはり「透明性」です。振り返りをする際、プロジェクトの課題を抽出するのに「データ」、「情報」はとても重要です。

MiroとJiraには、それまでプロジェクトで遂行してきた様々な実績データが蓄積されています。これを抽出しプロジェクトメンバーに気づきを与える「情報」に変換する際、人の手で集計して情報化するとその人の仮説や意図がどうしても反映されてしまいます。

そこでMiroとJiraを機械的に連携させ、私たちがこれまで多くのアジャイル開発プロジェクトを実践、支援してきた中で得られたノウハウを基にJira上のダッシュボード画面で客観的な情報として出すことにより、メンバー全員が納得感のある、腹落ちした課題を導出することができます。

MiroとJiraの連携でより洗練

野球で言えば、打率やホームラン数などの打撃成績や防御率などの投手成績をはじめとしたデータがリアルタイムに見られることで、監督やコーチの主観的な評価ではなく、客観的な情報からチームの強化ポイントがタイムリーに把握できる状態のイメージです。

この客観的な情報こそが「透明性」の担保に大きな意味を持ち、MiroとJiraの連携による大きな価値が生まれていると感じています。

私たちはコロナ禍前のプロジェクトルームのホワイトボードに進捗を貼り出す進め方よりも、開発管理環境として洗練、効率化されていると思っています。

― 他にも見えてきた効果などがあれば教えてください。

非同期で学習して、進捗を反映

長: Miroは自由な使い方ができるので、プロジェクトごとに使い方を工夫していることが多いです。私が支援したプロジェクトではMiroボード上で学習の進捗が見える化できた事例がありました。自分たちでフレームを用意して、私たち支援側からのアドバイス内容をMiroボードで付箋に貼り出し、各メンバーは都合のいい時間に学習し、終わったら自分の名前のタグをつけていきます。

特にアジャイル開発では、開発や様々なスクラムイベント(会議)に出ることで、まとまった学習時間がとり辛い背景もあり、このようなケースでは、各自が自分のペースで空き時間を見つけて非同期に学習していくことで効率があがったようです。

発言しにくいことも意思表示できるように

寺田: 会議の場ではどうしても言葉を発することをためらう人が出てきます。でも、Miroであれば発言せずとも意思表示ができます。例えばアジャイル開発で見積もりをする際にプランニングポーカーというやり方があるのですが、これはMiro上で数字の付箋にマウスカーソルを動かすだけで見積もりの意思表示が可能です。

【イメージ】 アジャイル開発の見積もりは数字の他に、L,M,Sなどのサイズで表現することもある

また、理解が追いついていない場合などに、流れを止めることに遠慮して、ファシリテーターが大丈夫か訊ねても言い出せないことがありますよね。この場合も、予め「理解した」「まだ理解ができていない」といったスペースをボード上に用意しておき、マウスカーソルやドット型の図形をどちらかに移動するだけに工夫して、意思表示しやすくしています。これならば、抵抗なく安心できてから次に進むことができます。

【イメージ】発言しなくても理解度を意思表示することができる

Miroはプロジェクトルームの役割を果たしてくれる

― Miroを導入する際に選ぶポイントや苦労などはあったのでしょうか?

寺田: いくつかオンラインホワイトボード製品を試しました。なかにはオンライン会議が終わると内容が消えてしまうものもあり、従来プロジェクトルームの壁や模造紙で実現できていた透明性を取り戻すという目的には合いませんでした。

また、オフィスソフトに付箋を貼って同時に数人が書き込んでいく使い勝手も検証してみましたが、用途が異なるので当然ではあるものの動作が重く、実用には適いませんでした。製品をさまざま使ったなかでは、Miroの使い勝手がやはり良かったです。

また、利用開始までの手軽さもあります。

NECには新たなクラウドサービスを利用する際の社内手続きがあり、スムーズに処理しても実際に使い始めるまで1週間前後のリードタイムがかかります。Miroも当初はプロジェクトごとにこの手続きをしていましたが、Miroがオンラインホワイトボードとしてさまざまな場面で浸透、実績が増えたことで、現在では社内でよく使われる他のクラウドサービス同様に、簡略化された手続きのもとにすぐに使い始められ、ブラウザベースであることの利点をさらに活かせるようになったと感じます。

― 今後の御社でのアジャイル開発の展望についてお聞かせください。

長: これまでの取り組みで、「タイムボックス」や「透明性」の部分はそれなりにできてきたと思います。ですが複数チーム、複数のプロジェクトのボード管理などはまだ工夫のしようがあると思うので、取り組んでいきたいです。

寺田:  長が言っているとおり、今後、スケールしたアジャイル開発に対して効率的、効果的な開発管理環境を提供していく事はとても重要です。大規模なアジャイル開発が完全リモートワークで実現できるようになればそれこそ、広いプロジェクトルームを確保しなくても済みますね。

また、今後「検査」、「適応」の部分にも手を伸ばしていきたいですね。例えば、前回のスプリントの振り返り結果をSlackやTeamsに連携させてリマインドし、「適応」の速度をあげていくような工夫などです。能動的に気づきも与えられるように進化させ、カイゼンのプロセスをより着実なものにしていきたいと考えています。

チームワークを促進するコラボレーションプラットフォームMiro

Miroは、一般的なオンラインホワイトボードのイメージよりも柔軟で多様な使い方ができるのが特徴です。ハイブリッドワークにおいてバーチャルオフィスになるような、チームがより生産的に共同作業を進めるための多くの機能とエンタープライズ水準のセキュリティを備えています。グローバルではFortune100企業の99%が採用し、日本ではTOPIX100の60%以上の企業、70万人以上にご利用いただいています。

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