お客様事例インタビュー

家庭料理を楽しむように知の探索を。三菱電機が特許を生み出すための仕掛けとは?

公開日 2023年4月28日 最終更新日 2023年9月19日

家庭料理を楽しむように知の探索を。三菱電機が特許を生み出すための仕掛けとは?

三菱電機の情報技術総合研究所では、多様な部署からメンバーがMiroに集まってアイデアを出すことで、特許を生み出しているそうです。

知的財産センターの大塚浩志さんは「イノベーションなんて、だいそれたものではないですよ」と笑い、「家庭料理のように普段づかいの知の探索がしたくて」と言います。

では、アイデアのブレストをどのように特許出願までつなげているのか。情報技術総合研究所 知的財産センターの大塚浩志さん、マイクロ波技術部マイクロ波送受信機グループの榊裕翔さん、光技術部フォトニクス制御グループの藤江彰裕さん、統合デザイン研究所 産業システムデザイン部 産業機器グループの橘温希さん、秋山朝子さんに聞きました。

※部署、肩書は2022年12月の取材時点のものです。

三菱電機の情報技術総合研究所、総勢800名規模で開発を

― みなさまがどのような事業部でどんなご担当をされているかを教えてください。

大塚: 鎌倉市にある三菱電機の情報技術総合研究所では、総勢800名ほどの研究員が人工衛星からレーダーシステムやさまざまな分野のセキュリティー技術、人工知能まで、人・社会に貢献する最先端の技術を開発しています。私自身も元は技術者で榊さんと同じ部で働いていました。現在は知的財産センターで特許の権利化作業や特許を生み出すための環境づくりを行っています。

大塚浩志さん

榊: 私は情報技術総合研究所のマイクロ波回路技術部で無線通信などにおける送受信機の研究開発を行っています。宇宙や地上の通信を行っていますが、別の市場でも応用できると考え、電波を使った新しい事業やビジネスモデルを作ったりもしています。

榊裕翔さん

藤江: 私は情報技術総合研究所の光技術部で、光学センサー装置内部のシステム設計や、宇宙向け光学望遠鏡の設計開発を担当しているエンジニアです。光技術は適用先が少なく、研究開発の閉塞感が漂いつつあるので、新たな展開先を模索しています。

藤江彰裕さん

橘: 私は統合デザイン研究所の産業システムデザイン部で、工場のなかで使われるような製品のデザインや工場の将来像を考えるような取り組みを行っています。

橘温希さん

秋山: 私も橘さんと同じく統合デザイン研究所の産業システムデザイン部でプロダクトデザインを行っています。イラスト等を使ったアイデアの可視化にも力を入れています。

秋山朝子さん

自由研究のような活動に、上司の反応は?

― そもそもMiroには、どのように出会って使い始めたのでしょうか?きっかけを教えてください

大塚: 当初2020年春に突然、榊さんが私のところに来まして、「一緒になにか新しいアイデアを出せないか?」と相談をもらったことがきっかけで一緒にアイデアを生み出すためのプロジェクトが生まれました。その活動でMiroを利用しています。

― 当時、榊さんはなぜ大塚さんに相談されたのですか?

榊: 何か面白いアイディアを考えたかったのですが、黙々と一人で頑張ったところで、いいアイデアが生み出せるとは思えなかったので。以前の先輩である大塚さんは知財でたくさんの事例を見ていますので、大塚さんに持ち込めばなにか光が見えるのではないかと思いました。

大塚: すぐに「よし、やろう。」と一緒にアイデアを考える活動をやり始めました。

榊: ならばもっと仲間が必要だと、興味がありそうな人に声をかけて4人から始めました。2~3週間に1度、2時間ほど時間を取って「面白そうな特許」を持ち寄り、用途を抽象化して分類して、さらに「この技術でこんなことができるんじゃないか?」とアイデアをふくらませています。

藤江: 実は榊さんから半年遅れくらいに私が関係するプロジェクトで大塚さんと一緒になり、大塚さんから、「榊さんの部ではこんな感じでアイデアを出しているけど、藤江さんのプロジェクトでもやってみないか?」と提案されたんです。

― それぞれの上司の方は、許可くださったのですか?

榊: はい。「新しいアイデアを生み出すには、他の人と自由に発想出来るような場と時間が必要です」と訴えたら、「いいんじゃない」と。

藤江: はい。私のプロジェクトでも上司は賛同してくれました。

― すごく理解がありますね。どうやって今のメンバーになったのでしょうか?

大塚: エンジニアはどうしても、数倍速くなったり容量が大きくなったりと「技術の性能を上げる」方向に行きがちなので、全く別の視点を持った専門家にも参加してほしかったんです。そこで統合デザイン研究所の橘さんや秋山さんにも声をかけて、プロジェクトに関わる人数を増やしていきました。

榊: 活動では当初PowerPointを使っていたのですが、その頃からブレストが進めやすいということで、統合デザイン研究所で以前から使っていたMiroをこのプロジェクトでも使うようになりました。

― すぐそばに全く別の分野の専門家がいるというのは、強いですね。

活動の目的は、やはり特許出願数、ということでしょうか?

大塚: その質問に対する回答がなかなか難しくて。

僕は特許出願数の目標は、集まった仲間でワイガヤしながらアイデアをたくさん出しているからこそ、「結果的に達成できてしまう」と思っているんです。目標達成は大切ですが、それが本活動の「目的」かと言われるとそうではなくて、「みんなで楽しみながらアイデアを発想できる体験を提供し、新しい知の創出に貢献する」ことが「目的」だと思っています。

「知の深化と探索」という概念がありますよね。

通常の研究開発業務が「知の深化」だとすると、僕がイメージしているのは「普段づかいの知の探索」なんです。

― なるほど、素敵です。実際に、この活動からどのようなモノができたのでしょうか。

榊: 例えば、アイデアの起点となる特許を検索した中に、滅菌包装されたデバイスに無線で給電をして電波でセンシングする、という発明がありました(WO2017/116752)。これをまず、無線給電×滅菌包装デバイスというように技術×用途に分解しました。

その後、用途を一度、「開けると状態が変わるもの」というように抽象化するんです。そして、抽象化したものを具体化していきます。具体的には以下のような感じです。

開けると状態が変わるものって何かあるかな。そうだ真空状態がある。真空状態での用途は何かあるかな。真空にして食品を保存する容器があるから、食品の保存用途で無線給電の技術が使えないかな。真空保存中だと蓋を開けられないから通常、食品の状態が確認できないけど、無線給電の技術を使えば容器内のセンサに電力を供給して真空のまま食品状態をセンシングできるかもしれないな、というように発想していきました。

      

藤江: 私のプロジェクトでは、それぞれの担当者が、独断と偏見で面白いと思った特許を参加メンバーに紹介して、その特許を起点に別のアイデアに落とし込む、ということをしています。

そうして生まれたアイデアのひとつに、マスクに光センサーをつけて吐いた息をセンシングするアイデアがあります。これは、最初は産業用ガスを検知する為のセンサーチップでした。だいぶ遠い問題に着想を得て、たまたまコロナ禍で身近だったマスクに着目してという感じで、下のようなマスク型センサーを発想しました。

Miroだと、過去のアイデアがまた「つながる」

― 実際に会議をするなかでMiroが役立ったことはありますか?

榊: 断然、ひとつのボードのいろいろなところからアイデア同士を「つなげられる」ところです。この活動では、過去の会議記録を1つのボードに残しているんですが、Miroだと「なにかいいアイデアなかったかな?」というときに、過去の会議から別の回にあった話を繋げたらどうなるだろう、という考え方もできます。

― 探索ですね!

榊: もしこれがPowerPointのスライドを見ながらだったら、1枚目と30枚目をつなげようという頭の動きにはならないんですよ。それがMiroだと「しれっと、あっちとこっちに矢印をひく」ができますから。

デザイナーがそばにいることの魅力

藤江: 会議では、アイデアが発散しすぎるのをデザインが収束してくれる場面があります。

技術者はどうしても、自身のアイデアを文字で突き詰めて表現したくなるのですが、秋山さんは、その場で「みんなが今話しているのって、結局こういうことですよね?」とさっと素早くMiroにイラストを書き込んで表してくれるんです。

榊: 「そうそう、そういうこと!」ってなります。

― それは盛り上がりそうです。

秋山: 私はタブレットを使って、Miro上に直接可視化しています。

文字で残した場合は「なんであんなこと言ったかな?」となってしまうこともありますよね。例えば、言葉だけで「クルマ」だと、みんなが想像しているものは違うかもしれませんが、イラストはみんなの頭のなかのイメージを合わせてくれますし、あとからでもぱっと見て思い出せます。今では統合デザイン研究所以外のメンバーもイラストを活用してくれるようになりました。上手・下手ではなく描く人が増えたらいいと思います。

秋山さんがその場で描くイラストの例

― 統合デザイン研究所では以前からMiroを使われていたそうですが、デザイナー視点からの使いやすさもあるのでしょうか?

橘: 私達は、デザイン思考に沿ったプロトタイプづくりなども行っています。

対面式のワークショップで写真を壁や模造紙に貼っていくとエリアの心配をしなければなりませんし、小さい付箋だと共有がしづらいですが、Miroだとすべての要素を1枚のボード上に入れられるので、共有するのが非常に手軽になりました。

入口から出口までカバーできるところもいいと思います。例えば、バリューチェーン分析やデザイン思考のフレームワークをテンプレートから起こし、結果もMiro上に展開できます。方法論を学びたいときには、テンプレートから探してみることもできますね。

それぞれが大事にしていること

― 会議をするなかで、みなさんが気をつけていることはありますか?

榊: ヒト、モノ、カネは有限ですので、「いつタマゴを産み落とすのか?」という課題はついてまわります。それでも、突拍子もないアイデアを「否定しない」、それでこそ「実験してみよう」にまでつながることが出てくると思います。

藤江: お互いのプロジェクトを尊重しつつのぞいてみる、見てみるというスタンスも大事かと思います。また、出来るだけ自分が所属する部門とは業務内容が異なる仲間を入れて議論する事は心がけています。

秋山: 統合デザイン研究所はアイデアを出し慣れているので、愉快で突拍子もない意見を出していいと意識しています。Miroを使うと、他の人が出したアイデアに言いやすい、乗っかりやすいところがありますね。

橘: 私はデザインの立場なので技術の専門分野ではエンジニアの皆さんに頭が上がりませんが、知らないなりに「初見の人がモノやサービスを利用する時にどう受け取るか」を考えるように心がけています。

「知の深化」と「知の探索」

― ここまで伺ってみると、イノベーションのための「知の深化」と「知の探索」を行う「両利きの経営(ambidexterity)」を実践されているようにも感じます。この活動をしていて良かったと思うことや、これからの展望はありますか?

大塚: 端的には発想が「飛べるようになった」と思います。数字としても、これまで出したアイデアの中から11件の特許出願を行っていて、すでに4件は特許として成立しています。

発想が飛べるようになったというのは、例えば、藤江さんが出した「光を空気中に反射させて風の向きを見られる」という技術に対して、女性の秋山さんから「髪型が崩れるのが嫌だから、風が弱い行動ルートを出せないですか?」というコメントが出てきて、そこを切り口に新しいアイデアが生まれるという感じです。技術者だけでは思いつかない視点から発想できるようになりました。

新しいつながりと、これから

橘: 部署を越えて繋がると発見があって、もっと前からやっていたかったですね。

榊: 特許に対する障壁が減ったというか、Miroで話すそばからイラストでやりとりできるとは最初は思ってもみませんでしたし、失敗を恐れなくなったところがあると思います。上司がこの活動を予算化してくれたり事例を他部門に紹介してくれたり、継続できるように応援してくれているところも大きいです。

まだ研究開発組織での取り組みであり、ベクトルの違う製造や営業の方の視点も加わると、また違った取り組みもできるのかもしれません。それでもなにより、三菱電機が社外と行うオープンイノベーションに限らず、社内でもオープンイノベーションができると分かったことが、大きな成果だと思います。

大塚: このプロジェクトを行うなかでメンバーには恵まれたと思っています。「知の深化」にかけては、ともすれば、研究者は自身が時間をかけてきた研究だから「失敗できない」というプレッシャーやプライドもあります。

しかし技術の適用先に関しては、多様な視点が集まって理解し合える喜びや楽しさをお互いに大切にできるからこそ、安心して探索し、新しく生み出せるものがあると実感しています。最終的には、このような集積が三菱電機の社会課題への取り組みになっていければと考えています。

「家庭料理を楽しむように知の探索を。」

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