アセットの蓄積・活用による素早い価値提供とお客様の DX 化をデジタル技術で更なる高みへ、Lumada Solution Hub プロジェクトでの Miro の使い方
公開日 2025年1月22日 最終更新日 2025年1月22日


グローバルで社会イノベーション事業を推進する日立製作所。Lumada Solution Hub は、業種や企業の垣根を越えて、日立が培ってきた各種アセット*を蓄積、共有、活用するための仕組みです。アセットやデジタル技術をを活かし、テイラーメイドでお客様の課題にソリューションを提供する、いわば工房のような役割を果たしています。そんな Lumada Solution Hubでは、サービスデザインに Miro を活用しているそうです。
* アセット:Lumada Solution Hubでは、ユースケース、ソリューション、プロダクトやサービス、そしてシステムアーキテクチャーを含む各種ナレッジをアセットとして定義している。
株式会社日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット アプリケーションサービス事業部 Lumada ソリューション推進本部 LSH 事業推進センタ センタ長の斎藤岳さん、開発チームのデザイナー熊谷ユリさん、張鶴さんに、どのように活用しているのかを聞きました。
「社会のニーズ」と「社内のアセット」を接続
― まず、所属する事業部の概要とみなさまの役割を教えてください。
斎藤: 現在、Lumada Solution Hub は日立製作所のアプリケーションサービス事業部でプロダクトの開発、お客様への適用、運用を担当しています。社会やお客様が直面する課題は複雑化していて、お客様ご自身でそれらの課題を解くためのハードルは日に日に増しています。それらを解決するための一つの方向性として、「場」があれば発展的に進む問題も多いと考えています。具体的には、我々が「アセット」として考えている「特定の課題を解くための知見」を蓄積し共有し、一緒に考えていくことで、新たな価値を生み出せる確率を高めることができるでしょう。
私達は日立製作所および日立グループで取り組んでいる Lumada 事業や多くのお客様への対応の中で培ってきた経験値を基に、そうした「場」をお客様に価値として提供したいと考えています。
知見を引き出し一緒に創る、イノベーションの「場」
Lumada は、“Illuminate(照らす・解明する・輝かせる)”と“Data(データ)”を組み合わせた造語で、新たな知見を引き出したい願いが込められています。具体的な活動としては、日立がLumadaとして蓄積してきた豊富なアセット(AIツール、メソドロジー、ユースケース、ソリューション)と製品や現場の豊富なナレッジを生かし、お客様との一連の協創プロセスを推進。デザイン主導のデジタルエンジニアリングでお客様のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。
その中で、3つの「つなぐ」仕組みを持っており、更なるイノベーションの創出の加速を狙っています。
- Lumada Innovation Hub・・・ パートナーやお客様を含めてさまざまな知見を持つステークホルダーが協力し合う
- Lumada Alliance Program・・・ 参画パートナーとともにオープンイノベーションを進める
- Lumada Solution Hub・・・ 日立が培ってきたノウハウやアセットを組み合わせ総合的にプロダクトのデリバリーまで支援する
私は現在、この3つを仕組みの中の一つである Lumada Solution Hub のプロダクトマネージャーを 2022 年度より担当させて頂いています。
張: 私と熊谷は Lumada Solution Hub におけるUX チームに属していて、さまざまな 分野におけるUI/UX の提案・実行から、拡販・宣伝までユーザーエクスペリエンスの向上をめざした取り組みを行っています。

熊谷: 私は中途入社で 2021 年から Lumada に参画しました。主に、開発側では UI/UX からビジュアルデザイン、ウェブデザイン、プロモーションにおける企画から制作まで担当しています。

― Lumada Solution Hub では具体的にどのようなサービスを手掛けているのか、教えてください。
斎藤: お客様のユースケースは様々ですが、基幹系システムに関しては金融系、産業系や公共機関など様々な業種、業態のお客様のシステムを担当しています。一方で DX 関係のシステム開発に取り組むお客様をサポートすることもあります。最近では、DX-Ready*な企業への変革の加速にむけ、自社内のアセットを活用し DX-Ready な企業への成長を伴走型でサポートする、「アセット活用開発支援ソリューション」を提供しています。
*出典:「DX 認定制度 申請要項」(経済産業省 情報技術利用促進課 / 独立行政法人 情報処理推進機構)
また、Lumada Solution Hub の情報発信にも力を入れており、社内ではイントラサイトでの 紹介ページの拡充を図り、社外では Hitachi Social Innovation Forum などのイベントなどにも出展し、より多くの人へ向けた取組みを強化しています。
Why Miro
最適なサービスデザインの進め方
― どのようなきっかけで Miro を使い始めたのでしょうか?
斎藤: 2021 年あたりから Lumada Solution Hub が提供するサービスのあり方・リニューアルの議論を開始しました。特にプロジェクトが大きな転換期を迎える場合には進め方のアプローチ、チームでのコミュニケーションは事業の品質にも直結する大事な部分です。私は当時、プロダクトマネージャーという立場ではなく、外部からそれらの方向転換を戦略面でサポートしていく立場でプロジェクトに関与していました。
当時から比較的広範囲にサービスが広がっており、お客様に対してのタッチポイントの種類や、適用のためのプロセス、バックオフィスである私たちの対応範囲などが複雑化していたのと、鳥瞰してみるとカスタマージャーニーの目線ではいくつかの抜け漏れや弱点が見えていました。
それらの特徴を踏まえてみると、これらの課題解決を実施していくための設計やデザインを進めるとき、我々が当時良くアプローチとして取っていたパワーポイントは最適だろうか、と考え直しました。
新しいプロセスを MECE に設計したり、既存のプロセスを改善する際に用いるペルソナの洗い出しやカスタマージャーニーなどをしっかり描き切っていきつつ、それを理解し、メンテナンスしていけるコンテンツに仕上げていく。そのためには、今までとは違うアプローチを取っていくべきだ、と考えました。それらを加味して、今後のサービス開発を持続的に発展させる進め方の設計ツール、コミュニケーションツールとしてMiroの採用を決めることにしました。
― コミュニケーションについては、どう感じられていたのでしょうか。
斎藤: プロジェクトの進め方の根幹の一つに、戦略があると思います。その戦略に基づいて、各チームが戦術を練り上げていく、という世界があると思うのですが、ただ「ビジネス戦略の資料を作ったよ」と資料を渡しても、自分がメンバーの立場なら忙しくて読み込む時間はなかなか取れませんし、そんなに簡単に頭に入らないですよね。
そういう一方通行の渡し方ではなくて、双方向でコミュニケーションをするという形に変わり、みんなで戦略や戦術をどう考えるのか?といった話をするようになれば、自然とチームでも「戦略に沿っているのだろうか」「こうしたほうがいいのではないか」といった会話から、戦術も意識して自分たちで作れるようになっていくのではないかと考えました。
How to use Miro
Miro でより身近に分かりやすく
― 社内には、Lumada Solution Hubの美しいMiroボードがあるとお聞きしました。どのようなものか教えてください。
熊谷: 私は2021 年に日立に参画し、まずLumada Solution Hub の理解のために紹介資料等を読み始めたのですが、専門部署が発信していますから、もちろん専門的な事が中心に説明されています。初めて見る私には分かりにくい部分が多く、理解するのにかなりの時間がかかりました。
そのことがきっかけで、当初の私のように初めてLumada Solution Hub のことを知りたい人たちに対し、理解のハードルを下げて分かりやすく伝えるため、Miro で「Lumada Solution Hub 紹介マップ」を作成することにしました。
Miro は自由な発想で描くことができ、見る人は実際に探索しているような動きで情報を見ることができます。例えば、知りたい場所へジャンプするような浮遊感や、知りたい内容をダイレクトに探るような没入感が体験できます。


「頭の中のイメージをダイレクトに投影できる」感覚
― 熊谷さんは、Miro を他にはどのように使っているのでしょうか?
熊谷: 例えばあるとき、社内の SE や営業が利用するツールについて不満に思っていることがないかアンケートを取ったことがありました。不満に思うことのフリー回答には、様々な意見があります。粒度の大きいもの、小さいもの、カテゴリーが同じもの、違うもの。具体的なこともあれば、なかには「何だか慣れない」「理由はわからないけれど、なんとなく変」といったそれだけでは具象化しにくい意見も寄せられました。

それらをMiro で付箋化してひとつひとつ動かして整理していくと、使う人がどういった体験をしていて、どこでつまづいたり困ったりしているのか、解釈や考えを深めやすくなります。付箋を動かしているうちに考えが浮かび、改善要求としてどうまとめていくかの検討が進むので、Miro で作業をしていると「頭の中のイメージをダイレクトに投影できる」という感じがします。

Google form で取得したアンケート内容をコピーして Miro にペーストし一括で付箋化できる機能は、ユーザーの声を拾って要求定義に移るまでの流れにとても便利な機能です。
また、社内ではコミュニケーションツールとしてビジネスチャットツールを導入して使っているのですが、チャット上で話す機会の少ない方でも Miro の「付箋」を利用することで、多数のご意見を頂くことができます。このように、Miro を利用することで隔たりなくつながることができるのです。
プロジェクト進行の無駄な時間を削減
― 張さんは、Miroをどう使われていますか?
張: 私は Lumada Solution Hub の社内・外情報発信を担当しており、日立グループ 向けの社内イントラサイトや、社外のお客さま向けの Lumada Solution Hubウェブサイトにて、Lumada Solution Hub が提供しているサービス・ソリューションや最新動向などについてのプロモーション活動を行っています。
プロモーション活動を推進するにあたり、ユーザーがLumada Solution Hub の情報にスムーズにアクセスできるようにすることが重要であると考えています。社内イントラサイトについては、これまでおよそ 50 ページ程のウェブサイトを作り、現在もコンテンツ拡充を続けています。その際、新たに作成するコンテンツをユーザーに届けるためにどのようにページを設計していくべきか、Miroのホワイトボード上にワイヤーフレームを描いて話し合っています。
リアルタイムでミーティングができない場合でも非同期でコメントができる点、視覚的に直してほしいという要望やコメントがもらいやすい点、また、それに対する対応状況や進捗が分かりやすい点が便利です。
また、Miro ではオブジェクト同士の配置やメンバー同士で議論をした際のコメントがホワイトボード上に増えていくことを気にせず表現できますので、よりストレスを感じずに作業を進めることができます。一般的なスライド作成ツールを使用する場合、コンテンツを追加したことにより、オブジェクトの配置が一つずれると、続くページ全体に渡って配置を調整する作業に時間を取られてしまいます。また、見たい場所に合わせて自由に拡大・縮小がやりやすいのも気に入っているポイントです。
実務を担当する社員だけでなく、Miroを日常的に使用していない弊社幹部社員も直接Miroのホワイトボードを見る形式でレビューをしています。もし専門的なデザインツールでワイヤーフレームを作っていたら、レビュー対象のコンテンツの画面キャプチャーを撮り、レビュー資料に貼り付け、資料をメールに添付して確認してもらい、幹部レビューでのフィードバックがあれば議事録を取るという流れになり、ワイヤーフレームの修正以外の工程でもさらに時間がかかっていたと思います。
斎藤: 熊谷さんや張さんが作成してくれたMiro 上での成果物をレビューさせて頂く私の立場からみても、こういった意思決定が非常に早くなった感覚があります。作業やミーティングの隙間時間に見てすぐフィードバックできるのもいいですし、付箋の中に満足度に対する考察があったり、「どれくらいの割合の人が使いづらいと思っているか」なども議論として残していく、表現できるのは非常に良いですね。
With Miro
「動いているものベース」で動いていく
― 斎藤さんの組織変革の狙いやチャレンジについても教えてください。
斎藤: 組織がいきなりアジャイルな組織になることは、なかなか難しいと思っています。 IT の世界の中で、所謂ウォーターフォール的な開発の領域では長い間、多くのケースで要件定義書、基本設計書、詳細設計書といったフェーズドアプローチのドキュメンテーションがあることを前提に動いている側面もあります。
このプロセスを少し崩して、例えば要件定義から基本設計に落ちるまでの一部のコンテンツについてはMiro のヴィジュアライゼーションの力で議論、デザイナーの力をもらってペルソナの洗い出しや、カスタマージャーニーマップを作って抜け漏れを議論していく。また、品質保証のバランスをちゃんと取りながら、必要な最低限の範囲のドキュメンテーションや形態を考えながら、「動いているものベース」でチームが動いていけるようにする。
そういった変更から少しずつ、始めています。チームによってやり方が違っても構わないので、チームリーダーにも最適な形を考えて欲しいですね。
Miroを活用した議論の工夫とプロダクトマネージャーの視点
斎藤: また、世の中の情報はオープンになり続けてきていて、総体的に様々なものがシェアされていく方向に向かっていると感じています。IT の世界にも、オープンソースといった潮流があり、これらはイノベーションやコラボレーションを通して業界を押し上げていく一つの原動力となっています。その力の一つは透明性と信頼性、でもあると思うのですが、一方で会議や仕事のコミュニケーションの進め方には同じようなアプローチはまだまだ手がついていないと個人的には思っています。
例えば、とある課題を議論するための目的の会議があったとしましょう。せっかく時間をかけてその課題を解決するための資料を準備しても、結論だけが書かれた資料のみでコミュニケーションを始めてしまうと、その特定の切り口だけに目線が集まりがちで、議論が膨らみにくいですよね。
言葉で補足するのにも限界があります。結果、会議の時間内ではオープンな議論ができず、会議が終わった後から個別に言われる、違う意見が出る、もっと良い議論が出る、といったことがあるのではないでしょうか。一体、何のためにあの時集まったのか?ということになりがちです。
「課題を議論するために本質的な議論」をするためにはやはり工夫が必要で、そういう時に一つ、Miro が活用できるのではないかと思っています。

― 具体的にはどんな工夫をするとよいでしょうか。
斎藤: 例えば、まずはレビュアーに意見を貰うために私がよく使うのは、議題の横に、 空の付箋を3つくらい置いておくことです。最初から自分の答えは書かず、それに至るまでの経緯や考え方的なものは書いておく。具体的な議論に入る前に、暗黙知を言語化してから本題に入るのもいいと思います。例えば、「調査の結果、A はこうです、B はこうしています、C はこういう状況です。では我々だったらどうでしょう。」と穴埋め問題のようなスタイルで入っていくと「それなら D の方向に行くべきなんじゃない?」「E の世界 も検討すべきでは?」という見解が出やすくなります。そして、そこからボード上で発散、収束をその場で一緒にやってしまう、ようなイメージです。
Miro 上の「穴埋め問題方式」的なアプローチは、ボード上で議論の制限を受けないので視覚的に表現しやすく、多くの意見が出てもその場で書き留めて、どんどん増やしていきます。そしてまたそこに戻ってくることもあります。
― 事業長の目線から、他に良かったことはありますか。
斎藤: Miro に関して言えば、Miro を積極的に使ってくれるメンバーにおいては、皆さんの思考や途中経過などの状況がより分かりやすくなったことでしょうか。結論も大事なのですが、それに至るまでの過程が見える、というのは非常に大事なことでもあると思います。設計とは、それらの過程を積み重ねて出来ている訳ですので。
社内外のつながり方を、出せる価値を変えていく
― Miroという道具を通じて、斎藤さんが変革をどのように考えて進めていらっしゃるのかが見えてきました。今後のLumada solution hub の展望についても教えてください。
斎藤: Lumada 事業を更に発展させていていくためにも、お客様の DX 化を支援するLumada Solution Hub の提供価値向上、お客様への提供スピードをもっと高めていく必要があると思っています。
そのためには社外に分かりやすく伝えることも大切ですが、社内からも Lumada Solution Hub に繋がりたいと感じてもらえることも大切だと思っています。今、そのために熊谷と張が取り組んでいるLumada Solution Hub の紹介マップでは、Miro を使っての紹介コンテンツとしての表現にチャレンジしています。
こうしたコミュニケーション面でのチャレンジも、私たちの新たなノウハウとして価値提供につなげていきたいです。

\Miroは日々進化しています/
Miroは、世界で8,000万人が利用し、25万以上の企業が採用しているイノベーションワークスペースです。組織が生産的に業務を進めるための多くの機能とエンタープライズ水準のセキュリティを備え、日本では120万人以上に幅広くご利用いただき、TOPIX100の60%以上の企業に採用されています。試験的に導入してみたい、説明を聞いてみたいなどのご要望がありましたら、お気軽にお問合せください。
もう少しプロダクトの概要を知りたい方は、マンガで分かるMiroの可能性や活用についての記事を是非ご覧ください。
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