
Miro 創業者兼 CEO、アンドレイ・クシド
ホワイトボードからイノベーション ワークスペースまでの Miro の歩み
今、Miro は新たな章に入りました。この新たな旅立ちを皆様と共に歩めることに、これ以上の喜びはありません。2011 年に Miro(当時は RealtimeBoard)を立ち上げた際の構想はシンプルで、「ホワイトボードをブラウザーで使えるようにする」ことを目指していました。百聞は一見に如かずと言いますが、ホワイトボードでの作業は、メンバー全員で共通認識を得る最速の方法だからです。
数年のうちに、私たちのツールはホワイトボードの枠をはるかに超え、UX デザインやプロダクト マネジメント、アジャイル開発など、幅広い領域で活用されるようになりました。そこで、ジョアン・ミロの作品と、「専門知識を活かすすべてのビジネスパーソンにキャンバスを提供し、日々の業務に創造性をもたらす」というアイデアに触発され、ブランド名を Miro へと変更しました。
パンデミック期には、ユーザー数が 500 万人から 5,000 万人にまで拡大し、イノベーションに不可欠な要素として、ビジュアル コラボレーションという分野を確立しました。しかし一方で、「次のイノベーションの創造を支える」というミッションを達成するためには、ビジュアル コラボレーションを超えて進化しなければならないという確信がありました。
2024 年、イノベーション ワークスペースの発表により、プロジェクト初期の混沌とした発散とその後の収束を、一つの場所で繋げることが可能になります。組織全体でワークフローを標準化できるよう、テーブルやタイムライン、ダイアグラム、カンバン、文書、スペース、ブループリントといった機能を追加しました。この 1 年で、ユーザーの皆様は 2,000 万以上のフォーマットを作成され、現在では 25 万を超えるお客様が Miro で日々イノベーションを推進されています。例えば、Ubisoft(ユービーアイソフト )様は Miro を活用してビデオゲーム制作を加速させ、チームワークを改善、Keller Williams(ケラー・ウィリアムズ)様は Miro で大規模な計画策定を実施することで、市場投入までの期間を 50% 短縮されています。
チームワークと同じ場所で AI を活用
創業当初、私たちの焦点は「人間同士のコラボレーションを可能にすること」でした。しかし、ここ数年で、AI が創造的な問題解決とイノベーション プロセスに大きな価値をもたらすことが明らかになりました。今では、チームで話し合う前後、その最中にも、AI と共に思考する時間が増えています。しかし、このやり方は分断も生み出します。AI は共同作業や業務の文脈から切り離された形で使われ、プロンプトの手動入力や、個々のモデル履歴への依存が発生しています。チャット型 AI は個人の学習や思考には有用ですが、その線形的な性質ゆえに、多様なアイデアの比較や広がりを持った解決策の可能性の探求、複数モデルを活用した問題解決には適していません。
私たちは、AI には直感的な使用感が必要であり、人間が協働する場所で共に働くべきだと考えています。AI はチームの創造的な協働を後押しし、前向きなアイデアの展開を支えながら、プロジェクトをスピーディーに前進させる存在であるべきです。
キャンバスは、AI が作用するには理想的な空間です。どちらも自由に発想を広げられ、決まった答えに縛られない柔軟な性質を持っているためです。キャンバス上では、ワークフローを始まりから終わりまでつなぎ、さまざまな道筋を探りながら、仕事の全体像を俯瞰して管理することができます。
AI イノベーション ワークスペース
本日、Miro は AI イノベーション ワークスペースへと進化します。複数の新製品も搭載し、イノベーションを皆様と共に進める場でありたいと願っています。
共創のための AI 機能
これらの新機能により AI が実際の働く場所に組み込まれることで、個人や各部門、または複数部門が交差しつつ進行するイノベーションの質とスピードが事業全体で向上します。私たちの目標は、お客様の仕事が滞りなく進むように支えることです。以下は新機能の要約となります。
フロー:複数のステップが次々に実行される視覚的な AI ワークフローを構築し、プロセスの各段階で AI を活用できます。キャンバス上で AI と共創し、共に考えることで、チームワークを円滑かつ高速化します。
サイドキック:キャンバス上で会話型 AI と直接コラボレーションします。サイドキックは、キャンバス上にすでにあるあらゆる形式の情報を複合的に利用するため、アイデアや構想を探求する際に複雑なプロンプトは必要ありません。
MCP(モデル コンテキスト プロトコル):Miro 上のコンテキスト情報をコード生成や AI ツールと連携させ、AI による自律的なコード作成の品質向上と、最新情報の同期を可能にします。MCP を通じて、ご利用の IDE(統合開発環境)から直接 Miro でダイアグラムを生成でき、アーキテクチャーの視覚化や新メンバーの受け入れ、協働による技術開発を滞りなく進めることができます。
自在な AI とナレッジの選択:Gemini Enterprise、Glean、Amazon Q など、ご利用のモデルや自社のナレッジを Miro と連携でき、社内規定や慣行に準拠するよう、出力情報を制御することが可能になります。
Ubisoft 様、レッドハット様、Virgin Media O2 様、GitHub 様の製品チームなど、AI 搭載の Miro を利用してワークフローを加速させ、市場投入を短期化されているお客様は多くいらっしゃいます。ご利用いただいている皆様におかれましては、AI を活用したコラボレーションにより、初期のアイデア創出から体系的な実行プロセスへと、途切れなくスムーズな移行が可能になります。
AI ファーストの製品開発
私たちはお客様との協業を通じて、AI 時代における製品開発のライフサイクルがいかに大きく変革されつつあるかを、まさに現場で実感しています。そこで、プロダクト、エンジニアリング、デザイン、マーケティングなどの各部門が、市場への展開において品質とスピードを両立できるよう、刷新されたアプローチを支援するソリューションとして、Miro for Product Acceleration(Miro で実現する製品開発の高速化)を開発しました。これは、AI を中心に据えた製品群が緊密に連携したエコシステムであり、顧客ニーズに適合する製品の構築、AI コード生成に対する投資効果の最大化、企業戦略や経営目標と日々の業務との連動を可能にするものです。
1.「作るべきもの」の発見と構築
AI の力によって、かつてないスピードで開発が可能になった一方で、進む方向を誤ればそのスピードはリスクにもなり得ます。プロダクト部門は分散した顧客フィードバックを処理しきれない状況ですが、エンジニアリング部門は AI により、従来数か月かかっていた開発を数日で完了させています。その結果、効率的に製品を構築しているものの、肝心の成果にはつながっていないのが現状です。開発スピードに見合うペースで複数の解決策を検討できなければ、誤った製品や機能に投資してしまい、貴重な開発リソースを浪費し、競合に後れを取るリスクが高まります。こうした背景を踏まえ、私たちは次の各製品を開発しました。断片化された顧客データをリアルタイムで統合するMiro Insights、アイデアを数分で視覚的に検証できる Miro Prototypes、静的な顧客ジャーニーマップを常に更新される生きた知識へと変貌させる Miro Journeys、そして、AI で作業を加速させる前に全員の意思統一を図るためのMiro Design Workshops です。これらはいずれも、速さを追求する前に、本当に価値あるものを見極めて作るという点を重視しています。
「Miro Insights を導入することで、お客様の声がきちんと届いていると実感してもらえます。それが顧客満足につながり、私たちの喜びにもなっています」
- Cyera 社 製品部門統括、ガイ・ガートナー氏
2.AI コード生成ツールの価値を最大化
コード生成ツールにおいて最も重要なのは「文脈」です。文脈が豊かで具体的であるほど、より自律的で価値あるコードが生まれます。Miro Technical Design は、アーキテクチャーにおける意思決定やドキュメントを、日々の業務と並行して管理できる、ひとつの協働空間を提供します。Miro Specs は、その文脈を構造化された仕様へと変換し、Model Context Protocol を通じて AI コード生成ツールに直接接続します。これにより、AI は「何を、なぜ作るのか」を深く理解したうえでコードを生成できるようになります。
3.経営戦略と実業務の紐付け
すべてのリーダーが経験する課題があります。経営目標を設定しても、経営会議から現場の会議に至るまでの間で、その意図が失われてしまうのです。組織はスピード感を持って動いていますが、それぞれが異なる方向に進んでしまっているのが現実です。Miro Goals は、そうした重要な情報を現場レベルで可視化し、日々の業務に組み込めるようにします。Miro Roadmaps は、重要な目標と連携した「生きた計画」を作成します。Miro Portfolios は、リアルタイムで状況を可視化し、AI が早期にズレや乖離を検知します。そしてPlanning & Delivery は、大部屋など大規模な計画策定から日々の実務まで、一貫して業務を最適化します。これにより、戦略からリリース製品までが途切れることのない一つの鎖で繋がり、誰もが会社の推進力になっているという手応えを感じることができます。
これらすべての新製品は、共通のデータモデル、高度なセキュリティーとコンプライアンス管理、そして責任ある AI 認証を備えた単一のプラットフォーム上に構築されています。この基盤は、小規模事業者や非営利団体から、急成長中のスタートアップ、厳格な規制下にある大企業まで、あらゆる規模の組織を支えます。
導入のご案内
これだけ多くの新しい AI 機能が利用可能になった今、お客様から最も多くいただく質問は、「どこから始め、どうすれば効果的に変革を進められるか」という点です。私たちの基本方針の一つは、直感的かつセルフサービスで使えるような製品の使用感を保つことです。そのため、すぐに使えるブループリントを用意し、すべてのお客様にご利用いただけるようにしました。さらに、大規模な組織の変革を支援するため、社内に AI 変革に造詣が深い担当者からなるプロフェッショナル サービスチームを立ち上げ、お客様と深く関わる戦略的パートナーの連携体制も整備しています。
Miro の最新製品を活用して、皆様がどのような価値を創出されるのか、非常に楽しみにしております。今後も皆様と共にこの変革の旅を歩めることを、心より光栄に思います。
改めまして、Miro へのご愛顧に感謝申し上げます。
アンドレイ・クシド
Miro 創業者兼 CEO



