データは、現代における組織の中枢をなす部分だといえます。顧客行動分析によるインサイトの取得、業務内容の監査と最適化、今後起こり得る状況を見据えた予測分析、事業の成長につながる新たなトレンドの発見など、様々な領域でチームはデータを使用しています。
データが重要であると認識されている一方で、多くの組織がデータの効果的な活用に苦慮しています。例えば、データセットが膨大かつ分断されていたり、多数のプラットフォーム間でサイロ化されていたりといった状況では、それを集約して具体的な洞察を導き出し、ポジティブな変化を促すことが非常に難しい場合があります。
そこで活躍するのが Azure Data Factory (ADF)などのサポートツールです。ここでは、ADF がもたらす効果と、ADF を用いてデータを次のアクションにつなげるための方法について、詳しくご説明します。
Azure Data Factory(ADF)とは?
Azure Data Factory(ADF)は、Microsoft が提供するクラウドベースのデータ インテグレーション サービスです。事業のデータパイプラインの作成、管理、自動化を可能にします。
ADF は、クラウド、オンプレミス、さまざまな環境下にあるシステム間で企業がデータを効率的に移行、変換、管理できるようサポート。
これらのプロセスを合理化、自動化することで、必要なときにいつでも分析に使えるよう、ADF が常に最新の状態にデータを維持、管理します。これは、迅速かつ戦略的なビジネスの意思決定を行うためにデータに大きく依存している、現代の分散型組織には欠かせません。
Azure Data Factory 導入がもたらす 10 のメリット
Azure Data Factory は、データ インテグレーションの自動化し、より優れた成果を創出するためのパワフルなツールです。事業におけるデータプロセスの合理化と効率化アップをサポートします。
それではここで、ADF が可能にする 10 のポイントを見ていきましょう。
- データインテグレーションを自動化します。ADF がシステム間のデータの移行や変換を実行。時間を節約し、マニュアル作業によるデータ処理の負担を軽減します。
- IT チームの負担を削減します。クラウドベースの ADF は、サーバーの設定やメンテナンスにかかる手間は不要。運用コストと IT チームの負担を削減できます。
- さまざまなデータソースと連携できます。多様なプラットフォームと統合できる ADF なら、クラウド、オンプレミス、どちらにデータが保存されていても、すべてのデータを簡単に一元管理することができます。
- 誰でも簡単に操作できます。ドラッグ&ドロップのシンプルなインターフェイスにより、非エンジニアでもデータワークフローを構築することができます。その一方で、技術者は必要に応じてコードの追加もできます。
- リアルタイム、スケジュールベースのタスクを自動化します。ADF にはイベントベースでデータタスクを自動化するためのスケジューリング機能、トリガー機能があり、データを常に最新の状態に維持することができます。
- 事業の成長とともにスケールします。ADF はビジネスの成長に伴い増加する大量のデータ処理に対応。実際の使用分にのみ料金が発生するため、コストを抑えることができます。
- 意思決定のプロセスを改善します。データのインテグレーションと処理の作業工程を自動化することで、ADF が常にリアルタイムのデータを提供。データに基づいた適切な判断を促し迅速な意思決定を可能にします。
- 高度な分析をサポートします。ADF を使えば、機械学習ソリューションや分析プラットフォームとの統合も簡単。インサイトや予測モデルを取得するために、データを有効活用できます。
- データのセキュリティーを確保します。セキュリティー機能とコンプライアンス ツールを搭載。データを保護し、金融や医療などの業界において遵守が求められる規制に沿ったデータ管理を可能にします。
- マニュアル作業によるミスを減らします。ADF は複雑なデータ作業のワークフローを自動化することで、マニュアル作業による人為的なミスの発生リスクを最小限に抑え、より正確なデータ処理を実現します。
では、その実際の仕組みについてご説明します。
ADF の仕組み: ベーシック
ADF のプロセスには、データの移行と変換を円滑に進めるための 5 つの主要なフェーズがあります。
- 取り込み
- 制御フロー
- データフロー
- スケジュール
- モニター
各フェーズの実行内容を、例を挙げて解説していきます。
複数のグローバル地域で事業を展開する大手小売企業。2024 年度のセールスデータをクレンジングし、一元管理する必要があります。このデータを用いて、来期の戦略立案や予算編成に役立てるため、営業実績をリアルタイムかつ非同期で分析する必要があります。
このプロセスにおいて ADF がどのように役立つのか、詳しく見ていきましょう。
- 取り込み:まず、ADF はセールス データベース、クラウドストレージ、地域店舗からの API など,複数のソースに接続され、データを中央リポジトリに集約します。
- 制御フロー:次に、ADF はすべての地域からのデータが取り込まれたことを確認するためにデータの処理順序を指定し、整合性をとるためにそのデータを処理します。各ステップの完了すると同時に自動的にタスクがトリガーされます。ここでいうアクションには、データの収集、変換(例:データのクレンジングや集約)、エラー処理のための条件分岐、分析ツールや機械学習プラットフォームなどの外部サービスとの統合が含まれます。
- データフロー:これらのアクションが完了すると、ADF は重複部分を削除してトータルの値を算出し、レポート用にフォーマットすることで、セールスデータをクレンジング、変換します。複雑なコーディングは必要ありません。
- スケジュール:ADF パイプラインを毎日(または指定された時間間隔で)自動的に実行するようスケジュールを設定できます。各地域のセールスデータが自動的に更新され、そのデータを必要に応じて意思決定に利用できます。
- モニター:最後に、ADF がパイプラインをリアルタイムでモニタリングし、パフォーマンスの追跡、問題の特定と解決、データ処理をスムーズかつ効率的に実行します。
このワークフローに従うことで、小売企業は全店舗のデータをシームレスに統合、管理し、タイムリーで信頼性の高い営業実績に関するインサイトを取得できます。
Azure Data Factory の始め方
Azure Data Factory では、まずはじめに ADF デザイナーを使ってデータパイプラインを設計するところから始めます。これは、異なるソースと宛先間でデータがどのように移動、変換するのかを定義するパイプラインを、簡単に作成するための視覚的なデザイナーツールです。
次に、Miro のAzure アーキテクチャ図テンプレートのような視覚的なダイアグラム作成ツールを使って、データフロー フレームワークをマッピングします。このテンプレートでは、シンプルなものから複雑なものまで、データワークフローを視覚的に整理し、実装前にすべてを明確にプランニングすることができます。
共有可能かつコラボレーションに最適なMiro テンプレートを使えば、チームメンバーや主要なステークホルダーとリアルタイムまたは非同期で、プランニング ドキュメント上での共同作業をリモート環境で進めることも可能です。
フレームワークの準備ができたところで、SQL データベースやクラウドストレージなどのデータソースに ADF を接続するためのリンクサービスを設定します。
次に、データの出所と送信先の詳細を示すデータセット を定義します。ADF のデータセットは、パイプラインの実行中にプラットフォームが読み込む / 書き込む特定のデータ構造(テーブル、ファイル、BLOBなど)を表し、ワークフローの各ステップで正しいデータが使用、処理されるように設定します。
最後に、不要な情報のフィルタリング、整合しない部分の修正、集約したデータの要約を行いデータフローを作成し、データを分析に適した形式に変換します。
集約したデータの理解を深め最大限に活用
現代の組織において、データの作成や保存といった処理はもはや日常的なことで、特に困ることは少ないでしょう。2025 年には世界で約 180 ゼタバイトものデータ(2020 年の 64.2 ゼタバイトから増加)が生成されるという研究予測データがあるほどですから。
問題は、データの接続にあります。ADF は、大規模かつ分散したデータプールを有する組織にとって、不可欠なツールです。ADF はデータの接続、集約、標準化を支援し、ビジネスを推進するための有意義なインサイトの創出に貢献します。